濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER

現代の格闘界を予見?『ロッキー』シリーズはなぜ不滅なのか…好きすぎて“ロッキー化した”選手も「自分の試合を映画に寄せました」 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

PROFILE

photograph by2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

posted2022/08/19 11:01

現代の格闘界を予見?『ロッキー』シリーズはなぜ不滅なのか…好きすぎて“ロッキー化した”選手も「自分の試合を映画に寄せました」<Number Web> photograph by 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

多くのファイターに影響を与え続けてきたロッキーシリーズ。『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』は8月19日より公開となる

ロッキーシリーズは「闘う理由を描くもの」

 丁寧な再編集によって“アメリカ万歳”度がかなり抑えられることになった。オリジナル版ではロッキー、アポロ、ドラゴの闘いが米ソの威信をかけた代理戦争のようにも表現されていたが『ロッキーVSドラゴ』では個人の感情、なぜ闘うのかにスポットが当てられた。スタローン曰く、ロッキーシリーズは「闘いではなく闘う理由を描くもの」なのだ。

 “国を背負う”ことについては、むしろ明確に否定されている。再編集、未公開シーン追加でそうなるということは、つまり元からスタローンに“そのつもり”があったということだ。

 細部にまでこだわり抜いた作業によって、ロッキーとアポロだけでなくドラゴの内面も浮き彫りになる。オリジナル版にもあった要素がさらに強められた形だ。

 無口な彼は、その強さをプロパガンダに使われてしまう。記者会見ではアポロの口撃に遭い、ジャーナリストたちも彼をアスリートではなく共産国の手先として見る。ラスベガスでのアポロ戦では星条旗を振る“愛国者”たちに罵声を浴びせられた。

数えきれないほどのファイターに影響を与えて

 その戸惑い、そして怒りが胸に迫る。シリーズのスピンオフ、18年の『クリード 炎の宿敵』ではロッキーに敗れたドラゴの屈辱の日々と逆襲が描かれている。その上で、時代を遡っての『ロッキーVSドラゴ』は“ドラゴに泣く”映画になっていた。

 それにしても凄まじいシリーズだ。1作目は76年の映画。続編が積み重なり、ファンを増やし、数えきれないほどのファイターに影響を与えて、今またこうして新たな感動を呼び起こす。立川での先行上映で2度目に見た時には、映画館に『トップガン:マーヴェリック』と『ロッキーVSドラゴ』のポスターが並んでいた。2022年に。不滅にもほどがある。

 トム・クルーズもスタローンも前に進み、その結果としてこうなっている。メイウェザーvs.朝倉未来が行なわれるのは9月25日。人気選手(元選手)のエキシビションを見たら、またロッキー、アポロ、そしてドラゴに会いたくなるだろう。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

関連記事

BACK 1 2 3 4
#ロッキー
#ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV
#ロッキー川村2
#シルベスター・スタローン

ボクシングの前後の記事

ページトップ