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号泣の大阪桐蔭「それができなかったのが弱さ」「手拍子に呑まれそうに」トリプルプレー、下関国際の研究…“甲子園の魔物”に王者は襲われた 

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間淳

間淳Jun Aida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2022/08/19 11:02

号泣の大阪桐蔭「それができなかったのが弱さ」「手拍子に呑まれそうに」トリプルプレー、下関国際の研究…“甲子園の魔物”に王者は襲われた<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

「最強」「絶対王者」と呼ばれても、彼らは高校生である。涙を流した大阪桐蔭の選手は素晴らしい戦いを見せた

 4-0で勝利した16日の3回戦・二松学舎大付属戦。大阪桐蔭は、4回途中から2番手でマウンドに上がった相手左腕・布施東海投手から1点も奪えなかったのだ。

 手を焼いていたのは、100キロを切る緩いカーブである。タイミングを崩される打者、体を開いてスイングをする打者、次戦以降の相手チームに攻略のヒントを与えるベスト8進出だった。

2番手投手の“内角攻め”に目線をずらされた

 わずかに見せた弱点を下関国際に突かれ、大阪桐蔭打線は本来の迫力を欠いた。さらに、下関国際2番手の仲井慎投手にペースを乱される。大阪桐蔭は当然、仲井投手を研究していた。左打者に対しては外角中心の攻め。ところが、140キロ台中盤の直球を内角に集めてくる。

 6回2アウト満塁の場面で、ボールゾーンに投じられた高めの直球に空振り三振を喫した丸山選手は言う。

「どんどん内角を攻められて目線をずらされました」

 本来ならば試合を決められるはずの場面は、いくつかあった。

 1、2回戦に続いて、この試合も立ちあがりに苦労していた古賀投手から、2点を先制した直後の1アウト一、三塁から盗塁失敗。5回はエラーで勝ち越して、なおも2アウト一、三塁のチャンスをつくりながら、畳みかけられなかった。

トリプルプレー、勝って当たり前の重圧

 焦りを象徴するシーンは、1点リードで迎えた7回だった。

 相手のエラーも重なって、ノーアウト一、二塁のチャンスをつくった。打席の7番・大前圭右選手のカウントは2ボール。3球目。一塁ランナーと二塁ランナーがスタートを切る。外角低めの直球をバントした大前選手の打球はフライとなり、投手に捕球される。そして、セカンド、ファーストとボールは送られてトリプルプレー。

 接戦になると攻撃的な采配を仕掛けるケースがある大阪桐蔭だが、最大の強さは隙を見せず、相手のミスを突く野球。しかし、好機を生かしきれなかった。西谷浩一監督は「得点に結びつけられなかった監督の責任です」と敗因を語った。

 大阪桐蔭は昨秋の明治神宮大会で優勝し、今春のセンバツも頂点に立った。今夏は激戦の大阪大会で圧倒的な強さを見せつけ、「秋春夏の3連覇」だけを目指して聖地に立った。優勝の大本命。勝って当たり前のプレッシャーと戦った夏だった。

 4番の丸山選手は、こう話す。

【次ページ】 キャプテンも「マウンドの前田に声が掛けられなかった」

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