甲子園の風BACK NUMBER
号泣の大阪桐蔭「それができなかったのが弱さ」「手拍子に呑まれそうに」トリプルプレー、下関国際の研究…“甲子園の魔物”に王者は襲われた
text by
間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/08/19 11:02
「最強」「絶対王者」と呼ばれても、彼らは高校生である。涙を流した大阪桐蔭の選手は素晴らしい戦いを見せた
「ビデオで見た通りの配球で来たことは1回もなくて、それを打ち崩さないと日本一になれないと、ずっと言ってきました。それができなかった自分たちの弱さです」
大阪桐蔭が劣勢になると、甲子園のスタンドからは歓声と拍手が沸き上がる。この試合の9回も、下関国際の応援に合わせて球場に響き渡る手拍子が起きた。これこそ“甲子園の魔物”かというかのような、他のチームが背負うことのない重圧とも戦った。
キャプテンも「マウンドの前田に声が掛けられなかった」
星子天真主将が胸の内を明かす。
「プレッシャーに負けないだけの練習はしてきましたが、お客さんの手拍子に呑まれそうになり、マウンドに立っていた2年生の前田(悠伍)に声をかけられなかったのが申し訳なかったです。力がないチームと思いながら全員でやっていく中で、追われる立場になって成長しきれなかったと感じます。秋と春に満足はしなかったが、どこかに隙があったのかもしれません」
日本一を目指す全てのチームは「打倒・大阪桐蔭」を掲げていた。失うものはなく、挑んでくる。王者は研究を重ねられ、ついに屈した。試合後に号泣して崩れ落ちる選手たちの姿は、背負っていた重みを物語っていた。
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