甲子園の風BACK NUMBER
“強すぎる大阪桐蔭”対策が通用せず…「体を超かがめた打撃フォーム」「当初から“前田投手は打てない”と」対戦校は悔しさを越えて称賛
posted2022/08/15 17:03
text by
間淳Jun Aida
photograph by
JIJI PRESS
壁は高い。想像以上に高い。越えようと挑んだ者たちは悔しさを通り越して驚き、称賛する。
夏の甲子園は3回戦に入った。春夏連覇を目指す大阪桐蔭は順当に勝ち進んでいる。今大会の最大の注目は、「どのチームが優勝するのか」ではなく、「大阪桐蔭を倒すチームはあるのか」であると言っていい。
昨秋の神宮大会と今春のセンバツを制した大阪桐蔭が、優勝候補の大本命であるのは疑いようがない。だが、公式戦を最も多く戦っている露出度の高さは他校の研究材料となり、最も対策を講じられやすいチームになっている。
旭川大高バッテリーが徹底した「幅を使った攻め」
大阪大会7試合で54得点を記録した強力打線を封じるため、1回戦で対戦した旭川大高バッテリーは、「幅を使った攻め方」に活路を見出した。初回は象徴的だった。先発した右投げの池田翔哉投手は右打者の伊藤櫂人選手に対し、4球目まで外角に直球とスライダーを交互に投げ、最後は内角のチェンジアップで見逃し三振に斬った。
プロ注目の右打者、3番・松尾汐恩選手には初球に外角低めのスライダーを投じる。2球目は、内角高めの直球。カウント1ボール1ストライクから、2球連続で外角低めのスライダーを選んで2ボール2ストライクとし、最後は内角高めの直球でファーストフライに仕留めた。
長打力のある伊藤選手や松尾選手でも、過度に警戒して外角一辺倒の配球にはしない。左打者に対しても、ホームベースを広く使う投球を見せる。直球を内外角に投げ分け、膝元のスライダーと外角のボールゾーンに沈むチェンジアップを組み合わせた。
大阪桐蔭打線が一巡した時点で、ヒットを許したのは先発投手だった9番・川原嗣貴選手の単打だけ。池田投手は試合後に「今までで一番良い投球だった」と振り返る出来だった。直球も変化球も思い通りに制球できていた。
内角の直球をホームランにされてビックリしました
しかし、大阪桐蔭の対応力は想像以上だった。
早くも二巡目に修正してきた。初ヒットを許した川原選手を一塁に背負った場面で、旭川大高の池田投手は伊藤選手に外角直球をレフト前に弾き返された。2アウト、一、二塁となって、迎えるのは松尾選手。2ボール1ストライクから外角のスライダーにバットを合わされ、ライト前へ運ばれる。大阪桐蔭が反撃の糸口をつかむタイムリーを許した。