甲子園の風BACK NUMBER
“強すぎる大阪桐蔭”対策が通用せず…「体を超かがめた打撃フォーム」「当初から“前田投手は打てない”と」対戦校は悔しさを越えて称賛
text by
間淳Jun Aida
photograph byJIJI PRESS
posted2022/08/15 17:03
聖望学園で1安打無失点の好投を見せた前田悠伍。大阪桐蔭は投打にギアを上げてきている
池田投手は6回に海老根優大選手、7回には伊藤選手にソロを浴びた。6回0/3を8安打4失点(自責3)で降板。試合はひっくり返されたものの「投球は100点でした」と満足感でいっぱいだった。そして、「大阪桐蔭打線は思っていたよりも上でした。内角の直球をホームランにされて、びっくりしました」と脱帽した。
攻撃では旭川大高は大技も小技も披露した。
プレーボール直後、1番・近藤伶音選手がサードへのセーフティバントで出塁。続く打者が送りバントを決めて1アウト二塁と大阪桐蔭の川原投手を攻めると、3番・藤田大輝選手がレフト前安打を放ってチャンスを拡大し、先制点へと結びつけた。藤田選手は続く3回の打席でライトスタンドへ2ランを放ち、一時は点差を3点まで広げた。
体を極端にかがめた打撃フォームの“奇策”も
大阪大会でわずか1失点と安定感抜群の投手陣を攻略しようと、奇策も見せた。8番打者と9番打者は2ストライクと追い込まれるまで、体を極端にかがめてストライクゾーンを小さく見せる構えで打席に立った。
だが、川原投手のリズムを崩せず、簡単に追い込まれて打ち取られた。3点目を奪ってからは、カーブを効果的に混ぜ、直球主体の投球から変化球を増やした大阪桐蔭バッテリーの配球に対応できなかった。
旭川大高は結局、3-6で敗戦。エースが自己評価100点満点の投球をしても、大阪桐蔭の壁は越えられなかった。
聖望学園のゲームプランは「失点を少なくする」だった
2回戦で大阪桐蔭と対戦した聖望学園のゲームプランは「とにかく失点を少なくする」ことだった。岡本幹成監督は試合後、こう明かした。
「相手の前田(悠伍)投手は、いい投手だと分かっていました。甲子園でも投げていて、当初から『これは打てない』と思っていました。それよりも、とにかく失点を少なくしないと勝機はないと。試合前から、打つことよりも守ることを選手に伝えていました」
序盤に失点すると、戦意を喪失してワンサイドゲームになる可能性がある。岡本監督の不安は的中した。
初回にエースの岡部大輝が2点を先制されると、4回9失点(自責7)で降板。後続の投手も攻撃の手を緩めない大阪桐蔭を止められず、25安打19失点で大敗した。岡本監督は「岡部の投球は普段と変わらないと感じていましたが、相手を少し意識し過ぎたかもしれません。最初に失点してしまって浮足立ってしまいました。大阪桐蔭はスイングスピードやボールの見極め、全てにおいてレベルが2つ、3つ上でした」と格の違いを痛感した。