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甲子園NHK解説者が語る“大阪桐蔭が敗れた理由”「(下関国際は)絶対王者を意識していなかった」…2年生・前田悠伍の涙に重なる「2018年の最強世代」 

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岡野誠

岡野誠Makoto Okano

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photograph byHideki Sugiyama

posted2022/08/19 17:01

甲子園NHK解説者が語る“大阪桐蔭が敗れた理由”「(下関国際は)絶対王者を意識していなかった」…2年生・前田悠伍の涙に重なる「2018年の最強世代」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

NHK人気解説者に聞く「大阪桐蔭の敗因」とは?

「私は肯定派です。勉強するために県外から私立の灘高校に進学しても何も言われないですよね。どうして野球はダメなのかと。ただ、練習ばかりして、学生の本分である勉強を疎かにするなら良くない。たとえば今年の米子東には初の野球留学生がいました。ピッチャーの藪本鉄平君が岐阜、セカンドの増田大耀君が滋賀から来た3年生でした。なぜ県外から入学したか聞くと、『甲子園も狙って大学にも進学したい』と。野球だけが目的で来てベンチに残れなかったら、3年間を後悔してしまう。そんな高校生活になってほしくない。それに野球は頭を使うスポーツですから、勉強も必ず役立ちます。中には、越境入学生に『必ずベンチに入れる』と確約する学校があると聞きますが、それは絶対に良くないですね」

「選手を集めれば強くなるわけではない」理由

 杉本氏の地元である鳥取は、予選の参加校数が少ない。それもあり、1970年代後半から甲子園出場に有利と考える生徒が県外から入学してきた。1981年春には、倉吉北が兵庫の上甲子園中からやってきたエース・坂本昇を擁してベスト4に進出。準決勝でPL学園に敗れたものの、“弱小県の飛躍”という強いインパクトを残したため、鳥取は野球留学生の多い地域というイメージを持たれている。

「鳥取城北、倉吉北、米子松蔭、米子北という4つの私立校は越境入学生を多数抱えていますけど、今夏の鳥取大会でベスト4に1校も残らなかった。鳥取大会過去10回で、私立校の甲子園出場は半分に過ぎません。これは、野球が必ずしも上手な選手を集めれば強くなるスポーツではないからだと思います。バレーボールなら優秀なアタッカーがスパイクを打てば、成功率は8割くらいでしょう。でも、野球は3割打てばいい。7回失敗しても優秀と言われるスポーツはほとんどない。だから、普段の意識の持ち方やメンタル面が勝負を左右します。特に高校野球の場合、その比重が大きくなる」

テレビには映らない「大阪桐蔭の強さ」

 今夏の大阪桐蔭は、ベンチ入りメンバー18人中14人が県外中学の出身。同じ近畿地区を除いても7人いる。西谷監督が夏を制した4大会で近畿以外出身の選手は2008年6人、2012年3人、2014年6人、2018年6人。福島由登や中村誠、根尾昂、柿木蓮などの主軸が越境入学のためか、「野球留学生がいるから強い」との批判もあった。しかし、杉本氏は「大阪桐蔭の強さと野球留学生の数に相関関係はありません」と言い、こう続けた。

【次ページ】 西谷監督が言う「準備」の意味

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