野球善哉BACK NUMBER
10人離脱で完敗は「仕方ない」ムードも…県岐阜商・鍛治舎監督が“選手に厳しかった”理由「逃げちゃ駄目」「バッターとしては失格」
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKYODO
posted2022/08/11 06:00
選手10人を入れ替えて1回戦に臨んだ県岐阜商。鍛治舎巧が選手にかけた言葉とは
「伊藤に厳しく言いましたよ。キャプテンとしては合格だけど、主力バッターとしては全くの失格。配球を読めていない。アウトコースの真っすぐとスライダー、これを狙い球にしてセンターから右中間に、ということを徹底してましたけども、そのボールに全く手が出ないという状況でしたから。
これだけ厳しく言うのは、彼のこれから先に必要なことだからです。野球人生はこれで終わりじゃないですからね。どこへ行ってもトップを目指せる選手なんで、厳しく話をしました。ただキャプテンシーという意味ではよくチームをまとめてやってくれたなと」
選手たちを労う気持ちがないわけではない。
鍛治舎監督は選手が入れ替わったとしても、本気で勝ちにいっていた。そのために必要な戦い方を浸透させること。そこは野球の指導者として譲れなかったのではないか。
主将「最高の監督だと思います」
このこだわりこそが、中学野球で名門チームを作り、高校でも秀岳館、そして県岐阜商と2校にわたって強豪を作り上げた男の「執念」だと思った。
キャプテンの伊藤は、鍛治舎監督の人物像についてこう語っている。
「一言で言ったら最高の監督だと思います。自分には鍛治舎監督の言葉、名言というか、一番好きな言葉があります。それは『思わないことは叶わない。結果は全て“思いなさい”』。いつも自分の頭の中に入れていて、この言葉を信じてずっと野球をやってきました。この言葉があったからこそ、ここまでやってこれたと思います」
全国制覇を目指したチームがコロナの影響を受けて、初戦で姿を消した。
この日の悔しさが、また新たなチームづくりへ活かされるに違いない。大会に出場できたことだけに満足していない鍛治舎監督の「執念」を目の当たりにして、そんなことを思った。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。