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「YUSHIの華は認めるが…」RIZINでの“ホスト対決”に朝倉未来の『BreakingDown』、「何でもあり」に傾く格闘技界への疑問
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/08/08 17:01
華やかな入場で『RIZIN.37』を盛り上げたYUSHI。一方で「格闘技」の線引きについて考えさせられるマッチメークでもあった
では、いったいどこで「総合格闘技やキック」と、「ボクシングや柔道や相撲」は線引きされているのか。筆者は、前者を指す格闘技とは「世間にはまだ完全に認知されていない格闘競技の集合体」ではないか、という仮説を立てる。相撲のように成熟した文化を持たず、オリンピック競技でもない格闘競技の集合体が、いわゆる“格闘技”の正体なのだ。
際限なく膨張する「格闘技」が抱えるリスク
ただ、冒頭でも少し触れた通り、現在の格闘技の区分けはそんなに単純なものではない。若年層から見れば、そういった区分け自体、昭和や平成の遺物に映るのではないか。1980年代後半から現場で取材し続ける筆者から見れば、現在の格闘技はまるで際限なく膨らみ続ける風船そのものだ。
そうなったのはインターネットテレビが配信する、従来の興行とは趣を異にする格闘技コンテンツが誕生したことと無関係ではない。最近だと「1分間、最強を決める。」がキャッチコピーで、朝倉未来・海兄弟がスペシャルアドバイザーを務める『BreakingDown』が大きな反響を巻き起こしている。先日開催された第5回大会は、関連動画の再生回数が1億回を超えたことを大会運営会社が明かした。
その一方で出場者の中にはほぼ完全に素人と思える者もいるだけに、「いつか事故が起こる」「これを格闘技と呼べるのか」という声も噴出する。
『RIZIN.37』の大会後、榊原信行CEOは『BreakingDown』から刺激を受けていることを打ち明けた。
「彼らのやり方はある意味時代を捉えている。彼らは『茶番は辞めません』と極論を言っていたけど、(視聴者に)感情移入させるところでいえばプロ。我々も従来のRIZINのアプローチとは違う形で見ていただく戦略を考えていかないといけない」
9月25日にさいたまスーパーアリーナでの開催が正式決定したフロイド・メイウェザーvs.朝倉未来も、2018年大晦日のメイウェザーvs.那須川天心と同様、リアルファイトのエキシビションマッチとして行われる公算が強い。
本来リアルファイトとエキシビションは相容れないものとして存在していたが、いつのまにか「同居もあり」という流れになった感がある。その場合、どちらに重きが置かれるのか。“特別ルール”と“本戦”の違いや、線引きの基準は何なのか。我々は気づかぬうちに格闘技の迷宮に入り込んでしまった。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。