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那須川天心vs武尊“衝撃のフジテレビ撤退”が想起させる「PRIDE消滅」の悲劇… いまや「格闘技はPPVで見る時代」なのか?
posted2022/06/04 06:01
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Susumu Nagao
5月31日、格闘技界に激震が走った。その震源は、同日昼過ぎにフジテレビが発信した以下のリリースだった。
《「THE MATCH 2022」についてのお知らせ
6月19日(日)の「THE MATCH 2022」は、主催者側との契約に至らず、フジテレビで放送しないことが決まりましたので、ここにお知らせいたします。》
この時点で、大会開催まで3週間を切っている。通常だったら、ありえない放送中止だ。いったい舞台裏で何が起こったのか。
榊原氏「頭が真っ白になった」
状況を説明するために、31日夜に都内で緊急記者会見が開かれた。「THE MATCH 2022」の実行委員会を編成するRISEの伊藤隆代表、K-1の中村拓己プロデューサーとともに会見に出席したRIZINの榊原信行CEOは、事態の推移を話し始めた。
「ひとつは『週刊ポスト』のことがあって、こういう事態に発展したのだと思っています。17年前(のPRIDEの放送中止)と大きく違うのは、記事が書かれてからここまで早いんですね」
「『週刊ポスト』のこと」とは、同誌5月20日号に掲載された「天心vs武尊の仕掛け人RIZIN代表・榊原信行氏『反社交際音声』流出トラブル」という記事を指す。その翌週には、同誌で榊原氏が「反社との交際は一切ない」と断言。事態は収束の方向に向かうと思われた。31日の会見で、榊原氏はその件で身辺調査があったことを打ち明けている。
「当然フジテレビさんからすると由々しき問題で、記事が出る前後から徹底的な身辺調査を含めた反社チェックというものを、私も含めて関係者の皆さんに行いました。そういう中で、皆さん反社との交際はないということでフジテレビさんも認識できたので、引き続き放送する、変更はございませんという発表をしています」
果たして今回の発表は突然だった。フジテレビとの交渉窓口だった榊原氏によると、この日の午前中に「今から内容証明を送る」という連絡があり、放送を見送ることになったと伝えられたという。榊原氏は「選手や関係者にきちんとご案内するための時間をいただきたい」と主張したが、フジテレビが応じることはなかった。それから程なくして、ネット上に冒頭のリリースが掲載された。
榊原氏の「頭が真っ白になった」という台詞は偽らざる本音だろう。