「右の本格派は、よほどのレベルではない限り、大阪桐蔭打線は2巡目から3巡目で対応してきます。右投手を登板させる前に、緩いボールを使える左投手や、内外角のコースに投げ分けられる左投手が大阪桐蔭の打者の感覚をずらせると、投手交代が緩急になって本来の打撃を封じることにつながります」

©Nanae Suzuki

智弁和歌山と明徳義塾にはチャンスがある？

　スカウトが大阪桐蔭を脅かす存在になり得るチームとして挙げた高校がある。唯一勝利している智弁和歌山に加えて明徳義塾だ。

　智弁和歌山は右の本格派、塩路柊季投手と武元一輝投手の2枚に、左の技巧派を組み合わせると大阪桐蔭打線を封じる可能性を感じさせるという。投手を援護する打線が強力なのも武器となる。

　明徳義塾を挙げた理由は、吉村優聖歩投手の存在だ。183センチの長身に長い手足。打者に背中を向けるほど体を大きくひねり、極端なインステップから左サイドスローで投球する。ボールの軌道は独特で、タイミングも取りづらい。特に、左打者は背中から投球が来るように見えるため、内角の直球に恐怖心を持ったり、外角のスライダーが遠く見えたりする。

　吉村投手は昨夏、2年生で甲子園のマウンドに立ち、準々決勝の智弁学園戦では8回まで1失点と好投した。9回は制球を乱してサヨナラ負けを喫し涙を流したが、強烈な印象を聖地に残した。スカウトは、こう評価する。

「左打者は相当、打ちにくいと思います。練習のしようがないタイプの投手です。フォームが変則というだけでなく、直球に力も切れもあります。走者を背負った時の投球と、試合によって制球力にばらつきがあるのが課題ですが、はまった時の投球は相手にとって脅威です。四球を出さない程度に荒れた投球になると、大阪桐蔭打線でも狙い球をしぼって対応するのは難しいかもしれません」

　吉村投手は昨夏に甲子園を経験していることも利点となる。大阪桐蔭の名前にひるまず、接戦に持ち込めばチャンスはある。“策士”馬淵史郎監督のタクトも、相手のペースを乱すポイントになるだろう。

敗戦した2校も実力者がいただけに

　なお大会前に注目校として智弁和歌山、明徳義塾とともに挙げていた京都国際と日本文理は初戦敗退したものの、スカウトの目から見て好選手がいた。

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