甲子園の風BACK NUMBER
“大阪桐蔭の5人”にスカウト熱視線…春→夏で何が進化? 「前田悠伍は2年ですが今秋ドラフトでも」「4番は技術、メンタルが高校生離れ」
posted2022/08/09 17:02
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Nanae Suzuki
(全2回の1回目/#2)も
春夏連覇を果たせるのか、それとも絶対王者を倒すチームが現れるのか。8月6日に開幕した夏の甲子園で、最大の注目は10日に初戦を迎える大阪桐蔭だろう。
圧倒的な強さで春のセンバツを制した大阪桐蔭は、横綱らしい戦いで夏の甲子園切符も掴んだ。履正社との決勝は7-0で快勝。大阪大会は計7試合で54得点。失点は、わずか1と全く危なげなかった。
プロ野球スカウトの1人は「大阪桐蔭が負ける姿を想像できない」と春夏連覇を予想する。その根拠に「切れ目のない打線」、「投手陣の充実」、「隙のないプレー」などを挙げ、中でも5人の選手は高校生の中で群を抜いているという。
1)前田悠伍投手(2年)/179cm75kg、左投左打
まだ2年生ですが、今秋のドラフトでも上位指名されるレベルの投手です。これまで粗削りながら潜在能力の高さを感じさせ、ドラフト1位で指名された高校生左腕はいましたが、前田投手は素材の素晴らしさに加えて高校生では考えられない完成度です。しなやかさがありながら力強い。ゆったりした投球フォームから、しなりを利かせて腕を振るので、直球に伸びがあります。大阪大会決勝でも、履正社の打者は直球を待っていても差し込まれていました。
しかも、変化球も含めてコントロールが良い。変化球を投げる時も腕が緩まないため、打者は見極めやタイミングの取り方に苦労します。けん制やフィールディングが上手いのも長所で、完成度、総合力の高さとして評価できる部分です。
春からの成長も感じました。まずは、ギアの切り替え。先発した履正社戦では8回を投げて7安打を許しましたが、得点は与えませんでした。走者を背負うと力の入れ方を変えて、外野に打球を飛ばさせない意志を感じました。
春は気持ちが先行して制球が乱れる場面がありましたが、力まずに力を入れる感覚が磨かれています。マウンド上での変化は、間の取り方にも表れていました。前田投手はテンポ良く投球するタイプですが、単調になりそうな時に自らひと呼吸置いたり、走者を背負うとボールを持つ長さを変えたりしていました。
技術的にも精神的にも成長し、これまで以上に走者を出しても簡単には得点を与えない投手、大崩れせず計算できる投手になっています。