甲子園の風BACK NUMBER
プロスカウト「大阪桐蔭が負けるイメージは難しいですが」“府大会7試合54得点1失点の無敵王者”が苦戦するなら…の「4要素」
posted2022/08/09 17:03
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Nanae Suzuki
(全2回の2回目/#1も)
大阪桐蔭にとって新たな歴史を刻む戦いが始まった。昨秋の明治神宮大会、今春のセンバツ、そして今夏の甲子園と「秋春夏の3連覇」に同校史上初めて挑む。
甲子園での戦い以上に厳しいとも表現される夏の大阪大会。大阪桐蔭は圧倒的な強さで聖地への切符をつかんだ。7試合で計54得点、1失点。決勝で対戦した履正社も寄せ付けなかった。今夏の甲子園で優勝候補の大本命に挙げられる春の王者に付け入る隙はないのか。プロ野球のスカウトは、「大阪桐蔭が負けるイメージをするのは難しいですが、勝機を見出す試合展開はあります」と指摘し、いくつかのキーワードを挙げる。
履正社と智弁和歌山は先手を取って大阪桐蔭を苦しめた
まずは、「先手」。大阪桐蔭は今夏の大阪大会の7試合、センバツの4試合、全てで3回までに先制している。しかも、初回の得点率が高い。早いタイミングで試合の主導権を握り、相手にプレッシャーをかけて追い込んでいく。相手チームの冷静さや戦意を喪失させる。
一方、勝利したものの苦戦を強いられた試合と、今のチームが唯一敗戦した試合は相手に先手を取られている。今年5月の春季大阪大会決勝。大阪桐蔭は8回に決勝点を奪って3-2で履正社に勝利したが、3回に2点を先制されて苦しめられた。
公式戦の連勝が29で止まった春季近畿大会決勝の智弁和歌山戦は初回に3点を奪われ、2-3で敗れている。この試合、大阪桐蔭の前田悠伍投手は、智弁和歌山の山口滉起選手に先頭打者ホームランを許した。さらに、2本のヒットとフォアボールで2死満塁とされると、ショートのエラーで2点を追加された。
プロ野球のスカウトは「個々の能力が高く、鍛え抜かれている大阪桐蔭であっても、プレッシャーがかかればミスは出やすくなります。劣勢の展開や相手のペースで進む試合になれば、イニングが進むにつれて少なからず焦りが生まれ、本来のパフォーマンスを出せなくなるケースもあります」と説明する。
継投でポイントとなる「左投手」と「技巧派」
この2試合には、もう1つ共通点がある。「継投」。強力な大阪桐蔭打線を封じるカギになるという。春季大阪大会決勝で、履正社は3人の投手が登板している。大阪桐蔭に土をつけた智弁和歌山は4人の投手を小刻みにつないだ。特に、スカウトがポイントに挙げるのは「左投手」と「技巧派」だ。