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プロスカウト「大阪桐蔭が負けるイメージは難しいですが」“府大会7試合54得点1失点の無敵王者”が苦戦するなら…の「4要素」 

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間淳

間淳Jun Aida

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posted2022/08/09 17:03

プロスカウト「大阪桐蔭が負けるイメージは難しいですが」“府大会7試合54得点1失点の無敵王者”が苦戦するなら…の「4要素」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

圧倒的な力を誇る大阪桐蔭。もし付け入るスキがあるとすれば、どんな要素か?

 京都国際で注目していたのは、プロ注目の左腕・森下瑠大投手と右腕・平野順大投手の左右両輪。スカウトは「森下投手が体調万全でマウンドに立てば、大阪桐蔭も連打で得点を重ねるのは難しいと見ています」と語っていた。大阪桐蔭は右打者と左打者がバランス良く並んでいるが、どちらかというと左投手を苦にする打者が多いとも分析しているのは興味深いポイントだ。

 右投手で「おもしろい存在」と名前を挙げていたのは、日本文理の田中晴也投手だった。身長186センチ、体重92キロの恵まれた体格から投じる直球の最速は150キロ。新潟大会の決勝では延長11回を3安打1失点(自責0)で投げ抜いた。打者としての評価も高いが、ボールの強さは高校トップレベルだという。

「まだ成長途中ですが、ポテンシャルはすごく高い投手です。甲子園出場校の右投手で、大阪桐蔭打線を力でねじ伏せられる可能性を唯一感じさせます。投球フォームが安定していない部分があるので大崩れするかもしれませんが、調子が良い時に大阪桐蔭と対戦できれば、抑え込む力は十分に持っています」

 森下、田中ともに甲子園を去ったが、大阪桐蔭相手に対戦校の各投手がどれだけの状態で投げられるかは焦点となる。

「初戦」はどのような高校にとっても難しい

 大阪桐蔭の死角として挙げたもう1つのキーワードは「初戦」。どんなチームでも、最初の試合は普段通りのプレーをするのは難しい。甲子園に限らず地方大会でも、優勝候補が初戦で姿を消すのは珍しくない。

 大阪桐蔭が今春のセンバツで最も僅差の展開となったのが、3-1で勝利した1回戦の鳴門戦だった。強力打線に真っ向勝負した鳴門のプロ注目左腕・冨田遼弥投手の好投が光ったが、大阪桐蔭打線もスイングにやや迫力を欠いた。スカウトは「大阪桐蔭は初戦で勝利すること、さらに良い感覚で戦えるかがポイント」と指摘する。

「センバツの鳴門戦は、打者のスイングに鋭さや思い切りの良さが少し足りませんでした。それでも好投手相手にチャンスを確実にものにし、隙のない守備と走塁を見せたところに大阪桐蔭の強さがあります。点差を見れば接戦でしたが、先制できたので心にゆとりがあったと思います。1回戦で旭川大高校に3点くらい先制される展開になると、さすがの大阪桐蔭にも焦りが出てくるかもしれません」

 大阪桐蔭の強さは選手層にもある。特に、投手陣は川原嗣貴投手、別所孝亮投手、前田悠伍投手と充実している。厳しい暑さと過密日程とも戦う甲子園。トーナメントを勝ち進むほど、誰もがエースと呼ばれるにふさわしい能力と経験がある投手を複数そろえる大阪桐蔭は有利に映る。

 夏の甲子園は大阪桐蔭が優勝候補筆頭であることは疑いようがない。だが、出場するのは厳しい地方大会を勝ち抜いた代表校。日本一を目指して、打倒・大阪桐蔭を掲げている。勝って当たり前のプレッシャーとも戦う大阪桐蔭に対して、“挑戦者たち”は思い切りぶつかってくるだろう。「秋春夏の3連覇」を目指す道には険しさもある。

 <#1/大阪桐蔭の「超高校級な5人の成長」からつづく>

#3に続く
「大阪桐蔭はミスが出ても崩れない」「春夏連覇に大きく前進」予言通りの初戦苦戦も…スカウトがホメる“名門らしい強さ”とは

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