甲子園の風BACK NUMBER

“甲子園中止世代”あの磐城高エースは今、神宮球場で…「あの時、同級生が野球をやめるのを止めてよかった」「同じ学年の人たちは仲間」

posted2022/08/09 17:01

text by

元永知宏Tomohiro Motonaga

photograph by

Number Web

「甲子園中止世代の逆襲」第1回立教大・沖政宗（磐城）
　2年前は「甲子園のない夏」だった。
　プロ野球であれば2年目、大学に進んだ選手なら2年生の夏。「甲子園中止世代」の今を追った。（全2回の後編／前編へ）

　◆◆◆

　日本で最古の歴史を誇る大学野球リーグである東京六大学には、全国から野球エリートが集まってくる。甲子園で輝かしい成績を残した選手もいれば、プロ野球のスカウトからマークされるドラフト候補もいる。

　そんなリーグに飛び込むにあたって、沖政宗の自己評価は高くなかった。

「もともと、自分に自信を持てないタイプなんです。選手としていいことではないかもしれませんが、『上には上がいる』と思って野球をやってきたので。大学ですごい選手たちと一緒にやっていけるのかも不安で、入学前はビビってました（笑）」

　東京六大学には、150キロを超えるストレート、多彩な変化球を操るピッチャーが少なくない。対して沖は……。

「僕のストレートの最速は140キロちょっと。ひとつの球種だけで勝負できるものはありません。だからこそ、コントロールを磨く必要があるなと。そんなスタートだったので、当初はリーグ戦で投げることよりも、ベンチに入ることが目標でした」

　入学後、沖は着実に成長していき、2021年秋季リーグ戦で神宮球場デビューを果たす。「まさか投げさせていただけるとは……」。自身がいちばん驚いたと言う1年生の大抜擢。背番号37をつけて、東京大学を相手に2回を無失点に抑えた。

　しかし、さらなる躍進が期待された今年の春季リーグ戦前、オープン戦で自信を失った。

1 2 3 4 NEXT