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9年前、大阪桐蔭のキャプテン・森友哉を襲った“連覇の重圧”「自分が引っ張らなあかんって」…“最後の夏”が終わった日、何を思ったか?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKYODO
posted2022/08/08 17:00
この年、明徳義塾との3回戦で大阪桐蔭は森友哉(左)らの失策も絡み序盤に5失点。岸潤一郎(現・西武)に完投を許した
藤浪にリードは必要なかった
2年秋の大阪府大会決勝戦で履正社に敗れたことも、森のそんな想いに拍車をかけた。
「履正社に負けた時は、ほんまこのチームは弱いんちゃうかなって思いました。不安しかなかったですね」
前年のチームから主力だったこと、捕手であること、キャプテンであること。「伸び伸びとプレーするだけでよかった」森の高校野球は大きく変化していた。
もちろん、チーム内で孤立していたわけではないのだが、1人で引っ張っている意識は強かった。自分が打って、守って、チームを鼓舞する。わかりやすいのは捕手としての苦悩だ。
「藤浪さんと組んでいた時、ほとんどリードなんて必要はなかったんですよ。困った時はストレートで抑えられた。澤田さんは球種が多くていろんな打ち取りかたができるピッチャーやから、苦労もせんかった。でも、新チームからは難しかったですね」
同学年のピッチャーは実力者だったとはいえ、この2人ほどではなかった。だが、ベンチに戻れば監督から注文を受けるのは森だ。自分で引っ張らないといけない日々は続いた。
高3夏は明徳義塾に完敗
高校3年の夏は府大会決勝戦で履正社を破って、連覇を目指す舞台にはたどり着いた。「正直、ほっとしました。これで連覇を狙える」。しかし、1、2回戦こそ突破したものの、3回戦で前年に土をつけていた明徳義塾のリベンジにあった。1対5の完敗だった。
森は2安打を放つ活躍を見せたものの、捕手としては三塁への悪送球というミスを犯して失点につなげ、走者としては盗塁失敗など、周囲から見ていても明らかなくらい、気持ちが空回りしていた。
「明徳は練習試合をよくするチームでライバルでした。だからこそ、力が入ってしまったなというのはありました。でも、この1年間、ずっとそんな感じやったんですよ。自分が引っ張らなあかんって力が入ってしまうことが多かったんです」