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四球は悪なのか?”村神様”村上宗隆への失投にみる一考察「対策は考えなくちゃ」「フォアボールを恥だと思うからダメなんです」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2022/07/03 17:01
巨人との3連戦最終日で26号3ランを放ったヤクルト村上宗隆
フォアボールを恥だと思い、フォアボールを出したことを悔やみ、出すことを警戒して腕が縮んで投げる。もちろん四球を与えることが守備側にとっていいことではないのは当たり前だ。ただ、あまりに四球を恐れ四球を与えることを意識する前に、まず腕を振れ!それが権藤さんの投手たちへのアドバイスなのである。
延長戦の末に敗れた6月29日の中日戦でも、決勝点を奪われた鍬原拓哉投手は、四球こそ出さなかったが、10回先頭のアリエル・マルチネス捕手に150㎞の真っ直ぐを痛打された。するとその後は真っ直ぐの球速も150㎞台が出なくなって、最後は無死満塁から代打の三ツ俣大樹内野手に決勝点となる押し出し死球を与えてしまった。
平内も鍬原も針を通すような制球力はなく、コントロールはアバウトだが決してボールに力がない投手ではない。彼らが今季、一軍で活躍の場を得ている背景には、もちろんキャンプから桑田コーチと取り組んできた制球力のアップがあったのも確かである。
必死にストライクをとりにいってはいないか?
ただ持ち味はやはり球の力であるはずだ。それが四球を出すまい、四球を出すことが恥だと思って、必死にストライクをとりにいってはいないだろうか。
権藤さんが説くのは決して四球を出してもいいということではない。ただそうしてマイナス思考になるのではなく、自分の持ち味をしっかり出し切ることをまず1番に考えることなのだ。しっかり腕を振る。そのためには四球を出すことを決して恐れてはならない、という戒めである。
四球は怖い。
確かにベンチにいる監督やコーチはいきなりボールが2つ続けば「キンタマが縮み上がって、冷や汗がダラダラ出てくる」かもしれない。ただ、マウンドに立つ投手は次の四球を恐れるより、目の前の打者に腕を振ってしっかり自分の球を投げることしかない。もし、それで歩かせたら……フォアボールを出したことなど忘れて、次の打者に向かって腕を振れ!
なぜなら投手の仕事は四球を出さないことではなく、相手の攻撃をゼロに抑えてベンチに帰ってくることだからだ。
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