プロ野球亭日乗BACK NUMBER
四球は悪なのか?”村神様”村上宗隆への失投にみる一考察「対策は考えなくちゃ」「フォアボールを恥だと思うからダメなんです」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2022/07/03 17:01
巨人との3連戦最終日で26号3ランを放ったヤクルト村上宗隆
8対8の同点の8回。この回からマウンドに上がった6番手の平内龍太投手が、先頭の塩見泰外野手をストレートで歩かせた。そこからバント処理をミスしてピンチを広げ、最後は“村神様”村上宗隆内野手に見事なまでの決勝3ランを神宮球場のバックスクリーンに叩き込まれてのジ・エンド。先頭打者への四球は失点につながる。球界でよく言われるこの格言通りの展開でヤクルトはさらに遠いところに行ってしまった。
「野球をやっている人なら、どこのバッテリーも言われていると思うんで……まあそうしないためにも、どうしようかっていうね、対策は僕らも考えなくちゃいけない」
新型コロナウイルス感染で桑田コーチはこの3連戦はチームを離脱。代わって平内の四球をこう評したのは、阿部慎之助作戦兼ディフェンスチーフコーチだった。
与四球はやはり悪であり、特に先頭打者への四球は失点につながる。だから絶対に避けなければならないミスとなるということだ。
フォアボールを恥と思うからダメなんですよ
ただ、ここでもう一つ、この忌み嫌われる与四死球をあえて意識するなという指導者がいることも伝えておきたい。
「日本のピッチャーはフォアボールを恥と思うからダメなんですよ」
こう語るのは元横浜(現DeNA)監督で17年の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で小久保裕紀監督の下、投手コーチを務めた権藤博さんだった。
権藤さんは投手が陥るラビリンスが、あまりに四球を与えることを否定し過ぎる日本の風潮にある、と指摘する。
「だってフォアボールなんてたった塁1つじゃないですか。4つ出してようやく1点ですから。でもフォアボールを出すと、日本の投手は何であんなところで出したんだろうってなる。それで今度はストライクをとりに行って、それを痛打されて終わっちゃう。そっちの方が最悪なんです」