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四球は悪なのか?”村神様”村上宗隆への失投にみる一考察「対策は考えなくちゃ」「フォアボールを恥だと思うからダメなんです」
 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph bySankei Shimbun

posted2022/07/03 17:01

四球は悪なのか?”村神様”村上宗隆への失投にみる一考察「対策は考えなくちゃ」「フォアボールを恥だと思うからダメなんです」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

巨人との3連戦最終日で26号3ランを放ったヤクルト村上宗隆

 そこで投手陣を見回した。

 岩瀬は終盤の左打者が並ぶ場面の切り札として考えていたので、クローザーとして固定はできない。一方の藤川は球に力はあるが制球に難があった。だからたった3球で打者を追い込む制球力と技術がある上原しかいない。

 その判断は当然の帰結だった。

 それほど四球は許せなかったのである。

四死球が増えてくると、失点する確率も……

「やっぱりフォアボール、デッドボール、四死球がどんどん増えてくると、失点する確率も高くなってくる」

 こう語っているのは巨人の投手陣を預かる桑田真澄投手チーフコーチだ。

「ですからエラーが出た後とか、ピンチで出て行った時とか勝負どころ、勝負球というのはどちらかといえば球威よりコントロールだと思う。やっぱり投手陣には先発もリリーフもコントロールを磨いて欲しいと思いますね」

 今年から投手陣指導の責任者となった桑田コーチが、まず掲げたのは制球力アップだった。そのためキャンプから投手陣にはさまざまな練習課題を与え、個々の制球力の向上に努めてきた。

 ただ、そんな掛け声とは裏腹に今年もチーム与四死球数277(6月30日現在、故意四球は除く)はリーグワースト。そしてあれだけ忌み嫌う四球が、今年のペナントレースの行方を完全に決めてしまったのではないか、と思える場面があった。

 首位独走気配のヤクルトと2位の巨人がぶつかった6月24日からの直接対決3連戦。巨人がエース・菅野智之投手とマット・シューメーカー投手、そして中4日で戸郷翔征投手の3人を先発に立ててきたのは、もちろん3連勝で何とかツバメの勢いを止めようという狙いだったはずだ。

 しかし初戦の菅野がヤクルト打線に捕まり、6対16と大敗して、3連勝の目論みはいきなり潰えた。ただ2戦目は打線が奮起し19対5でお返しして、わずかな反撃ムードを残した第3戦。序盤の大量リードを戸郷が守れず3回に捕まり混濁したゲーム展開となったが、結果的には1つの四球から巨人はズシリと重い黒星を喫することとなったのである。

【次ページ】 フォアボールを恥と思うからダメなんですよ

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