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“キャディーの職務放棄”騒動はなぜ起きた? ベテラン同業者が明かす“トラブル予備軍”がゼロではないウラ事情
text by
田中宏治Koji Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2022/06/29 17:01
大西葵(右)のキャディーを務めた大江順一氏。試合途中で会場を立ち去ったことが大々的に報じられた
一部のキャディーのあり得ない行動として選手の決断より前にキャディーバッグからクラブを抜くことを挙げる。
「6番アイアンで打とうと思ったのに、自分が先に7番アイアンを抜いたら、迷うだろうし、イメージも崩れるでしょう。あれをやるキャディーを見ると、何を考えているんだろうって思ってしまいますね」
反対にティーショットをドライバーで打つことが決まっているホールならスッとクラブを先に抜いておく。キャディーの行動には一つひとつに意味が込められている。
ただし、これはトップ選手と組んでいるからできること。
「ツアーの上位30~40人は自分でマネジメントできる選手ばかりですが、ツアーにはキャディーの指示通りに打つという選手もいるのは分かっています」
男女で求めるものが違う!?
実際にシード選手以外と組むことが多いキャディーに話を聞くと、印象はかなり変わってくる。
「男子では残り距離、風向き、絶対行ってほしくない場所の3つしか言いません。余計なことを言ったら『どこに打つかは俺が決めるから黙ってろ』と怒られますからね。女子で同じようにしたら『どこに打つのか、はっきり言ってくれないと分からない』という反応が返ってくることがあります。男女でキャディーに求めるものが違うんです」
ここで雇い主である選手がキャディーの指示を待つといういびつな関係が生まれてしまうのだ。
もちろん、すべての選手とキャディーの関係が崩れるわけではないが、スイングやクラブにまで口を出し、コーチのように振る舞い出すケースもある。
「本当は相性がいいキャディーさん1人にお願いしたいけど、慣れ合いになってしまうのが怖い。3人ぐらいのキャディーさんに交代でお願いするのが娘にもキャディーさんにも緊張感があっていいのかなと思います」とはある選手の父親の言葉だ。女子ツアーではキャディーをローテーションさせる選手が多いのに対し、男子ではほぼ固定されている。その理由がここで見えてくる。