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「髪を切ったら“婚約破棄されたんだ”と書かれて…」韓国の人気女子ゴルファーが明かす“うつ病”との闘い《スター選手の知られざる苦労》
posted2022/07/01 17:00
text by
南しずかShizuka Minami
photograph by
Shizuka Minami
米メジャー第3戦・KPMG全米女子プロゴルフ選手権(6月23日〜26日)を制したのは、27歳の韓国人チョン・インジだった。
初日から首位を守っての完全優勝。自身にとっても2018年10月のKEBハナバンク選手権以来、およそ3年8カ月ぶりとなる米ツアー通算4勝目。キラキラとした笑顔を見せた優勝会見では「やりました!」とガッツポーズしながら喜びを表現した。
だが、その笑顔の裏には知られざる苦労がある。しばらく勝利から遠ざかっている間、インジはうつ病と闘っていた。正確には、今も向き合い続けている。
渋野と同じ「20歳でメジャー初出場初優勝」
インジの登場は華々しかった。18歳だった2012年に韓国ツアーでプロデビューし、翌年に韓国女子オープンで優勝。15年7月に全米女子オープンでメジャー初出場初優勝を飾ると、同年10月には日本女子オープンでも優勝し、韓米日のナショナルオープン制覇を達成した。
ただ強いだけではなく、試合中に声援に応えて手を振ったり、お辞儀をしたりと愛想の良さもあいまって、世界中のゴルフファンの多くが彗星の如く現れたインジに魅了された。日本でいう、19年の「渋野日向子の衝撃」に近いかもしれない。
インジはその翌年にもメジャー大会の1つであるエビアン選手権を制し、名実ともにスター選手の仲間入りを果たした。そんな人気も実力も“絶頂”というタイミングで、インジはうつ病を患う。
「原因は1つじゃなかった」
昨年、症状が落ち着いていた頃に、そう教えてくれた。
16年の米ツアー本格参戦以降、初めての海外生活に戸惑った。韓国にいる家族や友だちに会えない、ゴルフの結果が思うように出ない……ちょっとしたことの積み重なりが次第に彼女の心を蝕んでいった。
「ゴルフの結果が良ければ全て良くなるよと言われたこともありましたが、そうじゃなかったんです。私の場合は逆。私生活が整っていなかったからゴルフに集中できなくて。集中できてなければ、結果が出るわけないですよね」