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“キャディーの職務放棄”騒動はなぜ起きた? ベテラン同業者が明かす“トラブル予備軍”がゼロではないウラ事情
text by
田中宏治Koji Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2022/06/29 17:01
大西葵(右)のキャディーを務めた大江順一氏。試合途中で会場を立ち去ったことが大々的に報じられた
さらに言えば、キャディー業界は完全な売り手市場だ。毎週、ツアーに姿を見せるキャディーは100~120人程度。男子ツアーは空き週が多い日程とはいえ、男女ともに試合があれば、出場する選手は合計200人を超える。家族やコーチがキャディーを務めている選手もいるため、全員がプロキャディーを必要としているわけではないが、それでも人数が足りていない。
3年前に発足した「日本プロキャディー協会」では志望者にセミナーを実施しているが、現時点で「プロキャディーとしてデビューした人は出ていません」(副代表理事を務める清水重憲キャディー)。現在いるプロキャディーは多くが、高校、大学のゴルフ部出身でプロになった先輩や同級生に誘われて、というパターン。1年、2年とキャディーを続けているうちに他の選手からも声がかかるようになる。最初のコネがなければ、参入が難しいため、人数が増えていかないのだ。
プロキャディーを起用できない場合はゴルフ場所属のハウスキャディーと組むことになるのだが、近年はセルフプレーが圧倒的に増えているため、多くのコースでその人数は限られている。
「選手には事前にハウスキャディーが少ないのでなるべく帯同キャディーを連れてきてほしいというお願いが出ることもあります」(別のツアー関係者)
大学生がキャディーを託される場合も?
ハウスも足りない場合にはアルバイトの学生がキャディーを務める。
「近隣の大学のゴルフ部員というケースがほとんどですが、それでも人手が足りなければゴルフを全く知らない学生がバッグを担ぐこともあります。その可能性があることが通達された試合では選手はなんとしても帯同キャディーを探すことになります」(同関係者)
結果的に周囲から見れば、キャディーとしての資質に疑問符が付くような人物にも仕事が回ってくるのだという。