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“キャディーの職務放棄”騒動はなぜ起きた? ベテラン同業者が明かす“トラブル予備軍”がゼロではないウラ事情
posted2022/06/29 17:01
text by
田中宏治Koji Tanaka
photograph by
Sankei Shimbun
国内最高の賞金総額3億円をかけた先週の女子ゴルフ「アース・モンダミンカップ」はプレーとは別の形で大きな話題を集めることになってしまった。
大会初日、大西葵とプロキャディーの大江順一氏の間に起きたトラブルが“職務放棄”として大々的に報じられたためだ。
すでにご存じの方も多いだろうが、スポーツ紙などの報道をもとにその概要を振り返ろう。
きっかけはスタート8ホール目の17番パー4で大西が2打目をシャンクするミスショット。レッドペナルティエリアに打ち込んだ後の処置を巡って2人の意見が対立した。その後、大江キャディーは声を荒らげ、バッグを運ぶなどの職務を放棄。続く18番パー5では大西が涙を浮かべ、なかなかティーショットを打てない。このプレーの後、大西が競技委員にキャディーの交代を申し出、その後はコーチがバッグを担ぐこととなった。
ただ、現場にいたという関係者は「一部始終を見ていたわけではない」としたうえで「大江キャディーが一方的に悪態をついたような報道がされていますが、私には2人がケンカしているように見えました。ちょっと印象が違いますね」。17番グリーンでは協力してラインを読むこともなくなった。大江キャディーは一瞬でもお互いが冷静になる時間を作ろうとしたのかもしれないが、完全に逆効果。大西の怒りは増幅し、2人の関係は崩壊に向かった。
日本女子プロゴルフ協会では当事者はもとより、同じ組でプレーしていた選手、キャディーらを聴取し、事実関係を把握したうえで処分などを審議するとしている。大江キャディーは2015年、藤田光里のバッグを担いでいた際にもトラブルを起こし、12日間の職務停止処分を受けた過去がある。
アドバイスはするが、決断は選手
選手とキャディーの関係はそれほど難しいものなのか。
今季もトップ選手と組むベテランキャディーの話を聞くと、特に難しさがあるようには思えない。アドバイスはするが、決断は選手がするもの。選手が雇い主でキャディーは雇い人。多くのゴルフファンがイメージする通りの関係が見えてくる。
「選手と意見が対立するとか、口論になるというのがちょっと理解できないんですよね。他のプランもあるよと提案することはあっても、それが採用されなかったからと言ってイラっとする意味が分かりません。選手にとってイメージができる方を選ぶのが一番じゃないですか」