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「稼ぐチームになる意志はあるか」Vリーグに問われる改革の旗振り…FC東京の“譲渡先決定”に安堵してはならない理由

posted2022/06/15 17:00

 
「稼ぐチームになる意志はあるか」Vリーグに問われる改革の旗振り…FC東京の“譲渡先決定”に安堵してはならない理由<Number Web> photograph by VOREAS,INC.

昨季、V2男子で初優勝を遂げたヴォレアス北海道。積極的な仕掛けが功を奏し、ホームゲームには多くのファンが駆けつける

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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VOREAS,INC.

 暦は6月。早いもので1年も半分が過ぎようとしている。

 バレーボール界に目を向ければ、パリ五輪へ向け男女日本代表が始動。ネーションズリーグが始まり、国内でもVリーグの各チームが新体制でスタートを迎えた。引退選手やチームを離れる監督、1人1人に思いを馳せればきりがない。だが昨季の国内シーズンを振り返るうえで、大きなトピックが1つ。昨年12月に発表されたV1男子、FC東京の活動休止だ。

 当初は突然の決定を「受け止められずにいる」と動揺を露わにした選手たちも、「今一生懸命取り組むことがこれからにつながる」と、その後の天皇杯、リーグを戦い抜き、4月にはネイチャーラボへの全体譲渡が正式発表された。

 結果的に「東京」からチームは消滅することなく、5月28日には感謝の集いを開催し、活動最終日となる31日にはSNSを通じて感謝のメッセージが伝えられた、6月13日には新たなチーム名「東京グレートベアーズ」も発表され、“大団円”の感がある。

 全体譲渡に向け、ネイチャーラボやVリーグとの交渉、計り知れないほどの尽力があり、チーム消滅という最悪の事態にならなかったことを、よかった、とは思う。

 しかし、喉元に刺さる小骨のように、何かがひっかかる。2度と同じことが起こらないと、言えるのだろうか。なぜ、このような事態を招いたのか。根本は解決していないのではないか。

「変わっていないどころか、後退している」

 年が明けた1月から約5カ月、選手や関係者、多くの人たちに話を聞く中で、実際に現場から上がっていたのは、嘆きの声ばかりだった。

「そもそも何も変わっていないんです。むしろ、変わっていないどころか、後退している。僕らが夢見て入った“新リーグ構想”はどこにもない。これから参入を希望しようというチームに『これができるよ』『ここが素晴らしいよ』と自信を持って勧めることなど、正直できません」

 そう話したのは、V2男子で初優勝したヴォレアス北海道を運営する株式会社VOREASの池田憲士郎・代表取締役社長だ。V1、V2、カテゴリーの違いはあれど、昨季もさまざまな会場へ取材に足を運ぶ中で圧倒的に素晴らしいホームゲームを開催していたのがヴォレアス北海道だった。決して大きくはない会場とはいえ、交通が不便な場所にはシャトルバスを出し、告知も十分。会場内はアルコールを含む飲食が可能で、寿司からスイーツまでレパートリーも豊富だった。チケット販売を含むデジタルマーケティングの徹底で顧客のニーズを網羅し、場内で流れる音楽や会場での細部に至る案内、照明やダンスチームによる演出も含め、リピーターはもちろん、初めて来た人でも間違いなく楽しめる。

 何より、コートと観客の距離も近く共に戦う一体感がある。特にV2優勝を決めるレギュラーラウンド最終戦は、地元の人たちが地元のチームを応援し、これぞホームゲーム、という熱気で満ち溢れていた。興行的にも地域密着という点でも成功し、先頭を走るように見えるヴォレアス北海道だが、池田社長が口にするのは充実感よりも危機感だ。

【次ページ】 「プロ化するか、しないか」

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