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「稼ぐチームになる意志はあるか」Vリーグに問われる改革の旗振り…FC東京の“譲渡先決定”に安堵してはならない理由
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byVOREAS,INC.
posted2022/06/15 17:00
昨季、V2男子で初優勝を遂げたヴォレアス北海道。積極的な仕掛けが功を奏し、ホームゲームには多くのファンが駆けつける
コロナ禍を差し引いても観客数の減少は目に見えて明らか。さらに、同時期開催のBリーグは多くの試合がテレビや新聞で報じられるのに対し、Vリーグを取材するメディアの数は決勝を除けば数えるほどしかいない。少しでも目に触れる機会を、と各チームがSNSの更新は積極的に行うものの、伝わる層は限られる。最寄り駅からアクセスの悪い会場へ向かう際、タクシーで会場名を伝えても「今日は何かあるんですか?」と言われることのほうが多い。
この現状をどれだけの関係者が共有しているだろうか。少なからずチームに携わる現場は、温度差もあれど「変わらなければならない」と地道な努力をする姿が見られる。一方で、Vリーグはどうか。
21年5月に就任した國分裕之会長は、興行として成り立たせるために各チームからヒアリングを実施しており「Vリーグとして改革の意志を示し、方向性を打ち出すべき準備を進めている」と話したうえで、持論も述べる。
「1つの案として、V1は興行と成績の両面でトップを目指すリーグとして活動し、V2はV1と同じ考えでトップを目指すセカンドカテゴリー。V3は興行としてのバレーボールではなく、地域密着を掲げ、バレーボール自体の魅力を伝えるべく、現状の活動を続ける。トップ(V1)でなければやる意味がない、と思うのではなく、それぞれ目指すものが違うだけで序列はない。目的が違うから箱が違うというだけで、すべて同じVリーグで価値があると示す。バスケットやラグビーを参考に、リーグが活性化するための“多様性”があってもいいのではないでしょうか」
アイディアはある。変えよう、変わらなければならないという意志はある。たが、Vリーグとしての公式発表を含め新たな展開は残念ながらまだ見られないのが現実だ。
“自分たちファースト”ばかりでは、活動形態も、置かれた環境も異なるチームを1つに束ねるのは実に困難だ。だからこそ、今必要なのは「Vリーグがどんな未来を目指すのか」というメッセージだろう。現状維持はむしろ衰退。バレーボールが面白い、と多くの人に伝えるための策、そして「本気で変わる」意志をリーグが先頭に立ち、強く打ち出してほしい。