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ブラジル代表「練習中ケンカの真相は“おふざけ”」「試合翌日に渋谷や銀座・居酒屋観光」 強さの根本に“オンとオフの切り替え力”
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byKazuo Fukuchi/JMPA
posted2022/06/10 11:02
ピッチ内外で多くの話題を提供したブラジル代表。彼らの行動から何を感じるか
MFフレッジ(マンチェスター・ユナイテッド)が右手で顔を覆いながら「全く、しょうがない奴らだな」といった感じで笑っており、FWラフィーニャ(リーズ)は爆笑。CBエデル・ミリタン(レアル・マドリー)も、歯を見せて笑っている……。
これが、40秒余りの動画から確認できる“事件”の全容だ。
静止した場面を写真で見て「ケンカ」と感じたのでは?
補足説明しておくと、リシャルリソンは陽気なブラジル選手の中でもとりわけ明るい性格で、ゴールを決めると両手を後ろに回し、左右に小刻みに首を振る「鳩ダンス」をすることで知られる。ニックネームは「ポンビーニョ」(小鳩ちゃん)。チームのムードメーカーにして、いじられ役である。
日本や欧州のメディアの多くがこれを「ケンカ」と捉えた理由の一つは、動画ではなく写真を見て判断したからではないか。静止した場面を見れば、本気でいがみ合っているように見えなくもない。
さらに、別の理由もありそうだ。ブラジル人のメンタリティーは日本人とは著しく異なっており、理解しづらいからではないか(かく言う僕も、ブラジルへ来た当初は非常に戸惑った)。
ラテン系の人々が生活を楽しもうという気持ちが強いことは知られているが、ブラジル人は特にその傾向が強い。
いつ、いかなる状況でも、できるだけ楽しもうとする。冗談が好きで、笑うことが大好き。いつも冗談ばかり言っている人、いつも笑っていて笑顔以外の表情を見たことがない人もいる。
代表戦の前の練習であれば、最初から最後まで真剣にやる、というのが日本人の常識だろう。ブラジル人も重要性はよくわかっており、決していいかげんな気持ちで練習をするわけではない。しかし、戦術練習ならいざ知らず、ウォーミングアップでは多少ふざけていても監督、コーチは何も言わない。
フレッジの居酒屋観光に見る「オンとオフの切り替え」
彼らはそうやってリラックスしながら、オンとオフを切り替え、オンになると凄まじい集中力を発揮する。要するに、メリハリをつけている。
過去のワールドカップの期間中、ブラジル選手が宿舎、さらには移動中の飛行機やバスにまで楽器を持ち込み、皆で歌い踊っている動画を見た人も多いのではないか。
これも全く同じ考え方で、大事な試合前でも、いやだからこそあえてリラックスし、それによって逆に集中力を高めている。
6日の試合前のウォーミングアップでも、一様に緊張した表情の日本選手とは対照的に、ネイマールは何が楽しいのか不明だが、喜色満面だった。