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ブラジル代表「練習中ケンカの真相は“おふざけ”」「試合翌日に渋谷や銀座・居酒屋観光」 強さの根本に“オンとオフの切り替え力”
posted2022/06/10 11:02
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Kazuo Fukuchi/JMPA
6月4日夜以降、日本のスポーツ紙やフットボール専門誌のウェブ版などが、「日本戦(6日)を控えた4日午後の練習中、ブラジル代表の数選手が掴み合いの大ゲンカ」などと報じた。
「国立競技場セレソンの変」と呼んだり、「本気度の表われか」といった摩訶不思議な解釈をするメディアまであった。
また、スペイン、ポルトガル、イングランドなどの欧州各国のメディアも「セレソンに内紛発生か」という日本とほぼ同じトーンで報じた。
まことしやかな説まで流布していたけど
さらに、この事件の中心人物であるFWリシャルリソンが所属するエバートンが今季、プレミアリーグの下位に低迷したことから、他のブラジル代表選手から「来季こそ間違いなく降格だな」などと揶揄され、自身も「お前は過大評価されている」、「(かつてエバートンに在籍していたベルギー代表FW)ルカクよりずっと下だよ」などと嘲笑されて堪忍袋の緒が切れた、といったまことしやかな説まで流布した。
しかし同日午後になると、ブラジルでは「これは揉め事ではない」といった趣旨の報道が出始めた。
たとえば、ブラジル代表のアジア遠征に記者を特派している電子スポーツ・メディア「グローボ・エスポルチ」は、「リシャルリソンとビニシウス(レアル・マドリー)が練習中に喧嘩だって? チェックしてみた」という記事を掲載。「写真だけ見て勘違いしたメディアが多かったようだが、仲たがいなどではなく、単なる冗談、おふざけだった」と伝えた。
日本戦後の記者会見で、ブラジル代表のチッチ監督は「内紛」報道を「フェイクニュースだ」と強く否定した。しかし、何かトラブルがあったときに当事者が火消しを図るのは当然だ。日本のファンの中には、最後まで事の真相がわからなった人がいるかもしれない。
「おふざけ」だったのになぜこんな報道に?
結論から言うと、これは喧嘩などではなく、ブラジル選手特有のおふざけだった。
それでは、実際に何が起きたのか、なぜこのような報道が行なわれたのか、そしてなぜブラジル選手はこんなことをするのか。
3日午後、韓国から日本へ移動したブラジル代表は、4日午後、6日の試合会場である東京国立競技場で日本での初練習を行なった。ウォーミングアップをしてから、全選手が数人ずつに分かれ、恒例の“鳥かご”をやった。