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智弁和歌山の大阪桐蔭撃破に地元の大学生が貢献していた!? “ノーサイン野球”の国立大野球部が「高校生のお手伝い」で学んだこと
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2022/06/05 06:01
近畿大会を裏方としてサポートした国立和歌山大学の野球部員。6月6日に開幕する全日本大学野球選手権に出場する
「レベルの高い高校は動きが早い」
ノーサイン野球を身上とする彼らにとっても、高校野球には多くのヒントが隠されていた。熱戦を近くで見ることで、自分たちのプレーにも生かせるものがあったと振り返る。
「高校野球は選手がみんな元気ではつらつとしたプレーのイメージがあります。でも大学野球ってどちらかと言うと間延びしてしまう部分があるというか、リーグ戦だと“今日負けても明日がある”みたいな空気があります。でも、高校生はその試合、その一球への賭ける思いが違う。自分たちも高校野球でプレーしてきたのに、大学ではそういう意識が薄れてしまっている部分もあるので、この補助の経験を経て、野球への情熱やひたむきさを思い出させてもらっています」
観客数2600人の上限を設けられた近畿大会は、智弁和歌山や市和歌山など和歌山の3校だけでなく、センバツ優勝校の大阪桐蔭や準優勝校の近江が登場することもあり、大盛況だった。特に準決勝では智弁和歌山vs報徳学園、大阪桐蔭vs近江という好カードが組まれ、お昼過ぎには上限の観客数に到達した。
「野球のレベルが高いです。特に近畿のレベルの高い学校がたくさん出ていたので、ひとつひとつの動きが早い。それと、高校生っていいなと思いました。全力疾走もそうですし、攻守交代をテキパキやっている学校が多くて、大学生にとっても勉強になります。自分たちも刺激を受けましたし、今回の経験をチームに還元できたらと思っています」(中西副務)
そんな選手たちを見て、大原監督は言う。
「学生野球は色んな人の支えがあって成り立っています。今回、球場にいて“和歌山大の学生さんか”と声を掛けていただいた方もいたと聞きました。そうやって地域の人との関わりを知って、学ぶこともたくさんあります。こういう取り組みを通して、野球や野球以外のことにも生かして欲しいと思います」
6月6日から始まる大学選手権では、関西学生野球リーグ王者の近畿大学と対戦する。
智弁和歌山の甲子園制覇や市立和歌山の躍進など、近年は高校生の活躍が目立つ和歌山勢。後輩たちからもらった刺激を力に変えて、今度は和歌山大が全国の舞台で暴れ回ることを期待したい。