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智弁和歌山の大阪桐蔭撃破に地元の大学生が貢献していた!? “ノーサイン野球”の国立大野球部が「高校生のお手伝い」で学んだこと

posted2022/06/05 06:01

 
智弁和歌山の大阪桐蔭撃破に地元の大学生が貢献していた!? “ノーサイン野球”の国立大野球部が「高校生のお手伝い」で学んだこと<Number Web> photograph by Fumi Sawai

近畿大会を裏方としてサポートした国立和歌山大学の野球部員。6月6日に開幕する全日本大学野球選手権に出場する

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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Fumi Sawai

 智弁和歌山高校が新チーム結成後、公式戦無敗を誇っていた大阪桐蔭を破って優勝を決めた春季高校野球近畿大会。その会場となった和歌山県・紀三井寺球場には、紺色のTシャツを着用した大学生たちが球場内外で動き回る姿があった。胸には『WAKAYAMA』の文字。

「ウチの部員が、高校野球の近畿大会のお手伝いさせてもらうんです。選手らもね、実はすごく楽しみにしているんですよ」

 大会の数週間前、国立和歌山大学の硬式野球部・大原弘監督から聞いた話だ。高校野球の大会運営に地元の大学生が携わるのは全国ではあまり例がない。これまでも近畿大会の取材を重ねてきたが、これまでは連盟の関係者やボランティアスタッフが運営をサポートしてきた。だから新鮮な驚きがあった。

国立和歌山大の「ノーサイン野球」

 2年連続3度目の全日本大学野球選手権大会に出場を決めた和歌山大は、国立大学ながら、近畿圏の大学野球をけん引する存在だ。創部は1924年。近年の躍進は目覚ましく、2012年に近畿学生野球連盟の1部に昇格すると、17年春にはリーグで創部初優勝。直後の全日本大学野球選手権大会ではベスト8入りを果たした。以降、リーグでは常に安定した力を発揮し続け、19年春秋、20年秋、21年秋も2位と上位進出は珍しくなくなった。

 和歌山大の特徴として、選手たちが場面ごとに自ら考えて動く「ノーサイン野球」が挙げられる。実戦を意識した守備練習を行うなど、できるだけ多くの部員が揃う曜日の練習時間を精いっぱい使い、その状況に応じた判断力を磨いてきた。いわゆるスポーツ推薦も毎年数人ほどで、いずれにしても選手たちは皆、国立大学の試験を突破した者たち。決してドラフト候補の選手が集まっている訳ではないが、頭を使う野球で全国レベルの成績を残しているのだ。

 私大に比べて、練習環境も決して恵まれているとは言えない。学内の敷地にあるグラウンドはアメフト部と共用で、広さも両翼は70mほど。平日は授業を終え16時過ぎから選手たちがグラウンドに集まるが、それぞれの授業の関係で全員が揃って練習開始できることは少ないという。室内練習場や寮はなく、遠方の選手は下宿や1人暮らしをしながら生活し、リーグ戦等のない時期は家庭教師や飲食店でアルバイトをしている者もいる。

 そんな自分たちの練習時間が限られる彼らは、なぜ高校野球のお手伝いを買って出たのか。

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