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「まずYouTubeで検索するのが普通」「誹謗中傷については…」車いすバスケ鳥海連志23歳の新世代アスリート発信術〈インタビュー〉 

text by

青木美帆

青木美帆Miho Awokie

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photograph byYuki Suenaga

posted2022/06/03 17:00

「まずYouTubeで検索するのが普通」「誹謗中傷については…」車いすバスケ鳥海連志23歳の新世代アスリート発信術〈インタビュー〉<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

車いすバスケ界のスタープレーヤーとなった鳥海連志。その考え方は独自性に溢れている

鳥海:SNSにいただくメッセージは「応援しています」というものが圧倒的に多いです。とはいえ時々、「僕が伝えたいこととは別のとらえ方をされているな」と感じるようなメッセージを受けることもあるんですが、あまりそういうネガティブなところに目を止めていないのが正直なところなので……覚えてないですね。

――『異なれ』の中でも、「いいことも悪いこともすぐに忘れるようにしている」「ストレスの元になりそうなものは躊躇なく断つ」と書かれていましたね。とはいえ、言葉の持つ力は強いもの。「気にしない」と頭で考えても、どうしてもそれにとらわれてしまうこともあるんじゃないかと思うのですが。

鳥海:いや、僕はまったく気にしません。もし身近な人から辛辣なことを言われたり、メッセージが送られてきたらショックかもしれません。でも、顔も知らなければ、どういうテンションで書いているかもわからない相手からのメッセージには、メンタルは削られないです。

――なるほど。すごくいい処世術ですね。もし近くに誹謗中傷に心を痛めている人がいたら、どんなアドバイスをされると思いますか?

鳥海:その人が何を大切にしているかを聞くんじゃないですかね。自分が他人に伝えたいことは何なのか。自分が何に重きを置いて生活したいと思っているのか。そこから大きく逸脱したことだったら目を向ける必要ないよねって言うと思います。なかなかそう思えないようだったら、その文を見てなぜ苦しい気持ちになったのかを聞いて、感情の流れを紐解いてあげる。そうすることで少しは気持ちに整理がつくと思うので。

障がい者である僕個人の立場で言うと

――様々な肌の色や性別、性的指向、ハンディキャップなどを持つ方々が社会の中でなめらかに生きていくために、マジョリティ側はどのような意識を持てばいいと思いますか。

鳥海:障がい者である僕個人の立場で言うと、マジョリティである健常者の方というより、障がい者の意識を変えなきゃいけないんじゃないかと思ってるんです。

 生活の中に不自由のない方って、ハンディキャップのある人々がどう不便を感じているかがわからないじゃないですか。例えば、健常者の人が車椅子の人とエレベーターで居合わせると、さっと先に入って「開」ボタンを押し、降りるときもボタンを押して「どうぞ」と促してくださいます。でも実は、車椅子ユーザーって“一番最初に乗って一番最後に降りる”のが一番楽なんですよね。僕はそういうときは必ず「先に降りてほしいんです」と伝えるようにしていますが、「せっかくの好意だから」とか「嫌な言葉を返されたらどうしよう」と、何も言わずそれを受け入れる人のほうが多いんじゃないかな。

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鳥海連志
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