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「まずYouTubeで検索するのが普通」「誹謗中傷については…」車いすバスケ鳥海連志23歳の新世代アスリート発信術〈インタビュー〉
text by
青木美帆Miho Awokie
photograph byYuki Suenaga
posted2022/06/03 17:00
車いすバスケ界のスタープレーヤーとなった鳥海連志。その考え方は独自性に溢れている
――YouTubeやTikTokなどの短い動画に触れている若い年代は、映画鑑賞やスポーツ観戦を「長すぎる」と敬遠し、ハイライト動画や倍速視聴で済ませる傾向があるそうです。鳥海選手はその感覚、理解できますか? 昭和生まれの人間としてはとても驚いたのですが…。
鳥海:めちゃくちゃよくわかります。
――タダで気軽に楽しめるコンテンツが席巻する中、スポーツ業界はお客さんを呼び込むために新たな工夫が必要です。スポーツ観戦に足を選ぶようなファンを増やすには、どうすればいいと思いますか?
鳥海:うーん、身近に感じられる存在になることと、労力を使ってもらえる存在になることですかね。
――労力ですか。
鳥海:これは人の受け売りなんですけど、人は時間やお金を費やすものに対して「これだけ対価を払ったんだし、もっと掘り下げてみよう」と思うようになるんだそうです。だから、『異なれ』を買って、時間をかけて読んでくださった方は、きっと「車いすバスケを見てみたいな」と思ってくださっていると思います。あくまで僕の希望ですけど(笑)。
ファンを含めた全員で広げていくという方向
――なるほど。
鳥海:『異なれ』を刊行するとき、僕はインスタグラムで「家族やお友達におすすめしてください」と告知しました。自分がハマっているものに身近な人もハマったら同じ時間を共有できて楽しいし、薦められた人がハマるまでのハードルも低いんじゃないかと思ったからです。
――確かに「買ってください」「読んでください」より、一歩進んだところに刺さりますね。
鳥海:有名なYouTuberが「動画を切り抜いて、どんどん転載してね」ってやり方で拡散してるのと同じような原理かもしれません。
――少し前までは「無断転載は厳禁」が主流でした。
鳥海:自分たちだけで広めるっていうのはもう限界があるんじゃないですかね。YouTuberの活動を見ていると、ファンを作って、ファンを含めた全員で広げていくという方向にシフトしているなと思うことが多いですし、スポーツ界もそういった手法に目を向けてもいいんじゃないかと思います。
まずはYouTubeで検索するのが普通
――確かに、YouTuberの手法から学ぶことは大きいですね。
鳥海:そうですね。僕も毎日のようにYouTubeを見ています。大学をやめたころは「バスケット以外の学びが欲しい」と思って、著名人や起業家のスピーチ動画を片っ端から見ていましたし、わからないことがあったらまずはYouTubeで検索するというのが普通になってます。
――SNSはとても便利ですし、情報発信やブランディングのために活用するアスリートもとても多いです。ただ、その中でいわれのない誹謗中傷などに苦しむ例も散見されています。鳥海選手ご自身はこのような経験はありますか?