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「1日3食が当たり前」に“大食い魔女”菅原初代58歳が考える違和感…“来年還暦”でも現役を続ける理由「大食いは、お金が目的ではない」
posted2022/06/03 11:02
text by
音部美穂Miho Otobe
photograph by
Wataru Sato
2016年に岩手県盛岡市内の自宅を改装し、パン店「カンパーニュ」をオープンした菅原。今も生地づくりから焼き上げ、販売まで一人でこなしているという。
「子供の頃からオーブンでクッキーを焼いたりするのが好きでした。料理も好きなんですが、不器用なので繊細な盛り付けができないんですよ。工作も下手で、学生時代、美術の成績はずっと2でしたからね。
だから、手先の器用さや美的センスが要求される製菓は厳しいな、と。パンは材料の配合や温度、湿度など数字の計算が必要だけど、それは得意なんです。加えて造形の楽しさもある。同じように作っても空気の入れ方でパンの表情が変わったり。それを工夫していくのがすごく楽しいんですよ」
しかし、始めたばかりの頃は失敗続きだったという。
「気温や湿度の変化に対応できていなくて、上手くいかなくなったことがありました。水分や発酵時間を調整したり、試行錯誤して。いろいろなアクシデントがあるけれど、そのたびに考え抜いて答えを出す。それは、大食いに通じるかもしれませんね。大食いも、結局は自分との闘いであって、難しい場面に直面した時に自分で努力して解決するしかないので」
「今は、基本的に1日1食生活」
パン職人の朝は早い。早朝3時半に起き、生地作りを始める。それでも、「パン職人の中では起きるのが遅い方だと思う」と笑う。パンを焼き上げて店頭に並べ、午前9時に開店し、夕方5時に閉店。その間、なんと食事はとらないそうだ。
「今は、基本的に1日1食生活。私は、食事と食事の間隔があいても、我慢できないほど空腹にはならないし、とことんお腹が空いてからドカッと食べたいんですよ。昼はまだ身体が活動している最中なので、食べると活動のパワーが落ちるような気がしちゃって。だから、軽くお菓子やパンを摘まんだりする程度ですね。それで、夜7時くらいに空腹がピークに達してから一気に食べるという感じです」
このスタイルを確立したのは、10代の頃。
1日3食きちんと食べなさい――。大人が異口同音に口にするこの言葉に、菅原は子供の頃から疑問を抱いていたという。