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殴る、殴る、ひたすら殴る… 伝説のドン・フライvs高山善廣から20年、「頬骨が軋む音」を聞いたカメラマンの証言《本人コメントも》
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2022/06/03 17:03
2002年6月23日、『PRIDE.21』で繰り広げられたドン・フライと高山善廣の壮絶な殴り合い。現在もMMA史上に残る名勝負として記憶されている
変形した顔で「兄ちゃんは大丈夫だから…」
2017年12月、私のスタジオで高山のチャリティー写真展を行った。彼にゆかりのある関係者を招いてのトークイベントも好評で、大盛況だった。レフェリーの和田良覚さんもその1人で、高山とはUWFインターナショナルで同門だったこともあり、彼の知られざるエピソードもたくさん披露してくれた。
先日、その和田さんに「あの試合からもう20年なんです」と言ったら、試合当日のことを話してくれた。和田家と高山家は家族ぐるみの付き合いで、フライ戦は息子の和田武尊(たける)くんも観戦していた。試合後、控え室に挨拶に行ったところ、先に入った武尊くんが泣きながら部屋を飛び出してきた。事情を聞いても「高山兄ちゃんが……」と言ったきり、泣きじゃくるばかりだったという。
成長した武尊さんに当時のことを取材すると、「私が5歳の時だったので、詳細は覚えていませんが……」と前置きしたうえで、「高山さんの顔が原形を留めていなくて、びっくりしたことだけは、今でも鮮烈に覚えています」と語ってくれた。
その後、父に連れられて改めて挨拶にきた武尊くんを見て、傷だらけの高山は「たける、兄ちゃんは大丈夫だから心配しないでね」と頭を撫でながら笑顔で言ったという。
このエピソードからもわかるように、高山善廣はどんな状況でも相手のことを気づかう優しさと強さを持った本物のファイターであり、人格者なのだ。
最後に、高山が少しでも早く回復することを願って、本人からのコメントを紹介したい。
「もう20年かー。20年たってもまだあちこちであーだこーだ言ってもらえる試合があるなんて、とってもモハメッドでアントニオな気分だよ!」
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。