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《筋肉美&コスプレも話題》JEWELSトーナメント完全優勝でUFC復帰なるか? 女子格闘家・中井りん35歳が見せつけた「正統派の証明」
posted2022/06/03 11:03
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
DEEP JEWELS
ベルトを3本巻いた。それでも紆余曲折だった。
女子MMAファイターの中井りんがデビューしたのは2006年のこと。舞台はパンクラスのリングだった。2010年、女子大会ヴァルキリーで無差別級タイトルを獲得。2012年にはパンクラスで女子バンタム級のベルトを巻いた。そこからUFC、RIZINに参戦。現在はDEEP JEWELSを主戦場にしている。女子MMAの老舗と言ってもいい大会だ。
5月8日の後楽園ホール大会、中井はDEEP JEWELSフライ級トーナメントに出場し、準決勝でTe-a、決勝で杉山しずかに勝って優勝。チャンピオンベルトを手にした。どちらも腕ひしぎ十字固めでの一本勝ち。3月の1回戦は藤田翔子にグラウンドのパンチでTKO勝ちしているから判定なしの“完全優勝”だ。しかもファイナルラウンドでは、杉山の準決勝の相手が計量オーバーで失格。杉山は決勝が1試合目で、中井だけが1日2試合している。それでも一本勝ちなのだから、その力はずば抜けていた。
中井りんといえば“分厚い筋肉”だったが…
試合を終えると、中井はUFC参戦をアピールした。世界最大、最高峰のMMA大会は、以前から彼女の目標だった。かつて出場した際には、勝つことができなかった。中井のキャリアにおける2つの黒星は、どちらもUFCで喫したものだ。ただ、その時はバンタム級(61.2kg)の試合だった。当時は女子フライ級がUFCになかったのである。今なら、よりベストに近い階級で世界に挑むことができる。
付け加えると、フライ級でも日本では重い部類だ。選手層が充実しているのは40kg台。RIZINが女子王座を制定しているスーパーアトム級は49kgリミットだ。
フライ級に限定すると、対戦相手もなかなかいない。ヴァルキリーの無差別級トーナメントに参戦した時は、大きい相手に対抗するため67-68kgで試合をした。今より10kgも重い。
そこからバンタム級→フライ級と階級を下げていった。中井りんといえば、分厚い筋肉が観客に強いインパクトを残してきた。ナース風コスプレも話題になった今回の計量を見ると、やはり階級を落とした分だけ昔よりも体は細く感じられた。
本人と所属ジム・修斗道場四国のWILD宇佐美館長に話を聞くと、現在はフィジカルトレーニング(筋力アップ)は重視していないそうだ。むしろ「(フィジカル練習の量を)極限まで削っています」。筋肉をつけることを意識したのはバンタム級まで。フライ級ならその必要はない。なおかつ、重い階級だった頃と比べてもパワーは維持できているそうだ。これはかなりのメリットになる。