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日本ダービー6度目の快挙…ドウデュースを導いた武豊53歳、実際どこが“神騎乗”だったのか?「いかにも武らしいオペレーション」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2022/05/30 12:00
“競馬の祭典”日本ダービーを制したドウデュースと武豊。左は2着のイクイノックス
そう武が話したように、すぐ前には1番人気のダノンベルーガ、その外には皐月賞馬ジオグリフがいた。さらに自分の後ろには2番人気のイクイノックスがいる。
「いいポジションが取れて、道中は本当にいい形になりました。馬場がかなりよかったのですが、ペースは少し速いかな、と。自分のペースで行こうと思っていました」
“最後の爆発力”を生んだ一番の理由は?
1、2コーナーを回り、向正面に入ると、馬群は15馬身ほどの縦長になった。
ドウデュースは先頭から10馬身ほど離れた14番手。左右に他馬がおらず、エキサイトしない絶好の位置だ。武はやや重心を後ろにかけて手綱を抑えていたが、引っかかる手前の「抜群の手応え」といったところで、ギリギリ折り合っていた。
ここで脚を溜めたことが、最後の爆発力につながった。掛からずに進むことができた一番の理由は、前走の皐月賞で、道中ゆっくりと進み、折り合いを最優先事項とする競馬をしたからだろう。逆に、皐月賞でポジションを取りに行く競馬をしていたら、皐月賞の着順は上がったかもしれないが、ダービーで折り合うことはできなかったのではないか。
その意味で、ダービーの勝因は皐月賞の乗り方にあったと言えよう。
淀みない流れもドウデュースに味方
1000m通過が58秒9という淀みない流れになったこともドウデュースに味方した。
脚を溜めることができさえすれば、最も切れるのはこの馬だ。
「馬の状態も最高によかったので、自信を持って4コーナーを回ってこられました。ゴーサインを出したときの反応が最高だったので、よしという気持ちになりました」
ラスト300m付近でゴーサインを受けたドウデュースは、ラスト200mを切ったところで先頭に躍り出た。5馬身ほどの差を一気に逆転する切れ味を見せた。
「反応がよすぎて、先頭に立つのがちょっと早かったんですけど、また鞭を入れると反応してくれて、本当にすごい馬だなと乗りながら思いました」
外からイクイノックスに迫られても二の脚を使って抜かせず、89代目のダービー馬となった。