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“最強のダービー2着馬”は? 成績は58戦5勝、それでも愛されたあの馬も「最強に“幸せな”2着馬かもね」《今年はイクイノックス》

posted2022/05/30 06:02

 
“最強のダービー2着馬”は? 成績は58戦5勝、それでも愛されたあの馬も「最強に“幸せな”2着馬かもね」《今年はイクイノックス》<Number Web> photograph by Sankei Shinbun

2008年日本ダービー。先頭を走るスマイルジャックはディープスカイに差され2着となったが、記憶に残る一頭だ

text by

石田敏徳

石田敏徳Toshinori Ishida

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Sankei Shinbun

誰しもが“特別”“夢”と表現するダービー。だからこそ、2着に敗れた馬たちの姿もファンの記憶に刻まれているだろう。ならば考えてみよう。“最強の敗者”は誰だ! 取材歴30年超のベテランライターが難題に出した答えとは。《全2回/前編から続く》【初出『Number978号(2019年5月16日発売)/肩書などはすべて当時】

 ただし同様のアプローチではもう1頭、'04年の2着馬ハーツクライも見逃せない。ダービーはキングカメハメハの軍門に下ったものの、4歳時の秋に本格化。意表を突く先行策に出た有馬記念ではディープインパクトを2着に従えて勝利を飾った。翌年のドバイシーマクラシックでは海外の強豪に4馬身余りの着差をつけて完勝、続く“キングジョージ”でも前年の欧州年度代表馬ハリケーンランと互角に渡り合い、小差の3着に食い下がった。

 その頃から兆候が出始めていたノド鳴りの症状が深刻化したため、不本意な形での引退を余儀なくされたとはいえ、種牡馬に転身してからも大成功。現役時代の管理調教師・橋口弘次郎に悲願のダービー制覇('14年)をもたらしたワンアンドオンリー、その'14年、日本産馬としては初の世界ランキング1位に輝いたジャスタウェイをはじめ、大物産駒を次々に送り出している。ちなみにハーツクライ(通算成績は海外も含め19戦5勝)のダービーの走破時計・2分23秒5は歴代2着馬の最速タイ。競走生活に残した足跡の大きさ、種牡馬としての活躍ぶりはともにシンボリクリスエスと甲乙つけがたく、この2頭は「最強2着馬の双璧」と思える。

成績だけでは決められない“最強の答え”

 しかし結論を急ぐ前に改めて考えてほしい。数式にも似たロジカルなアプローチだけで“最強の答え”が導き出せる? 競馬の世界はそんなに薄っぺらいだろうか。

 小桧山悟という調教師がいる。'96年の開業以降、彼はユニークな信念を貫いて厩舎を運営してきた。成績より何より、人との“縁”を大切にする。馬主にはできるだけ負担をかけないように腐心――だから高馬は勧めないし、預からない――しながら、みんなで競馬を楽しむ。道徳の教科書に書いてあるような理想論と映るかもしれないが、彼は本当にそうやって調教師の道を歩んできた。

【次ページ】 小桧山と’08年の2着馬スマイルジャック

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