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「オルフェーヴルはなぜ負けたんだ」何十回も見直したあの凱旋門賞…カンテレ岡安アナが初めて語る“アナウンサー人生で一番印象深いレース” 

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齋藤裕(Number編集部)

齋藤裕(Number編集部)Yu Saitou

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photograph byTakuya Sugiyama/AFLO

posted2022/05/23 11:01

「オルフェーヴルはなぜ負けたんだ」何十回も見直したあの凱旋門賞…カンテレ岡安アナが初めて語る“アナウンサー人生で一番印象深いレース”<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama/AFLO

関西テレビ岡安譲アナ。「(2012年の凱旋門賞は)アナウンサー人生の中で最も印象に残るレース」と明かした

岡安 4日前から入りました。着いてからは池江(泰寿)調教師に話を聞かせてもらったり、2日前の金曜日には凱旋門賞のコースを自分の足で歩いたんです。日本の競馬場に比べると、ボコッと空いた穴がそのままにされていたり、踏んでいて地面が柔らかく感じるところもあり、歩いていても力がいるし、馬にとってはタフさが求められるだろうなとは感じました。

――実況に生かされた部分などありましたか?

岡安 最初の直線途中からコーナーまで高低差10mの登り坂なのですが、歩いてみると長く登りが続き、意外と疲れる。登り下りがはっきりしている日本の競馬場とは異なっていました。そのあたりは実感をもって「高低差10m、長く緩やかな坂を登っていきます」と伝えることができました。他にもラチ沿いに林が見える場面では「冬支度を始めた木々の脇を18頭が駆け抜けていきます」と言っているのですが、ちょっと紅葉になっている景色を見て、歩いたからこそ盛り込めた表現でした。

僕とオルフェーヴルが組めば、絶対何かが起こる

――それは現地に行かないと捉えられない表現ですね。

岡安 もちろん現地に行かずに実況する「オフチューブ」でも、できなくはないです。ただ、「ギアの上げどころ」がわからないのは致命的な欠点ですね。

――ギアの上げどころ?

岡安 現地にいると、馬群がここにいて、ゴール板はここ、と位置関係がわかります。フィニッシュまでを逆算して、ここで声を大きくしていこうと決められるんです。これは生中継を日本から実況するというスタイルではできません。だから2日前に実況席でその位置関係を確認しましたね。

――当日は『Mr.サンデー』の番組内でレースが生中継されました。

岡安 放送の前日はいろいろ考えました。考えた末に「明日は競馬を知らない人も見ているだろう。そしたらこの凱旋門賞をきっかけに、競馬を好きになる人が増えてほしい。そのためにはやっぱりオルフェーヴルのキャラクターを伝えたほうがいいだろう」という結論に至りました。なので当日、枠入りの前にスタジオの宮根(誠司)さん、そして視聴者のみなさんに向けて「オルフェーヴルより強い馬は今後現れるかもしれませんが、これほど個性的で、なおかつ強い馬というのはおそらく今世紀中には出てこないんじゃないか、それくらいスター性を持った馬だと思います」という話をしました。ロンシャン競馬場で見た栗毛のオルフェーヴルはどの馬よりも目立っていました。実は三冠を達成した11年菊花賞、逸走して2着となった12年阪神大賞典も実況したレースの天候は曇。パリの陽に照らされる金色の馬体は僕が見たオルフェーヴルの中で一番の輝きを見せていて、今も脳裏に焼き付いています。

「実況しながら、勝ったと思ったのですが…」

――レースにあたって、実況のフレーズに関してはどんな準備をしたんですか?

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