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来季の10番候補が中学生!? 昌平高校サッカー部はなぜ強豪になれたのか…藤島監督が語る部活動の限界「6年強化の流れは加速していく」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2022/05/20 17:01
昌平高校の下部組織にあたるFC LAVIDA(ラヴィーダ)に所属するMF山口豪太。今年3月のJヴィレッジカップでは、当時中学2年生ながら高校チームの10番を背負った
こうした組織づくりではトップダウン的な指導になる例も少なくないが、指導者同士の交流が盛んなこと、そしてフィードバックの機会を必ず設ける仕組みは、サッカーにおけるトレンドにも柔軟に対応できるようになったという。
「(FC LAVIDA創設から)10年経ちますが、その間でも多くの変化がありました。一番は『サッカーの変化』です。世界的に見ても戦術、戦略の面は日進月歩で、柔軟性を持たないと置いていかれてしまう状況にあります。凝り固まったサッカーのスタイルはその時の流れにハマれば良いですが、ハマらないとギャップを生み出してしまいます。変に組織のコンセプトなどにガチガチに固められるのではなく、時としてそれと違うことを伝えたほうがプラスのこともあると思います。
だからこそ、『サッカーはこうあるべき』というような凝り固まった考え方を養うのではなく、組織全体がプラスになる変化を受け入れる柔軟性を持ち続けることが、継続的に組織として発展したり、良い選手を育てていく肝になると思っています」
「将来的には総合型クラブに」
Jリーグが加盟条件として下部組織の創設を義務付けたことで高校サッカー界もアップデートを余儀なくされた。少子化が進む社会では、学校教育にもさらに変化が訪れるだろう。
そういう時代背景の中で行われた昌平とFC LAVIDAの取り組みは、育成アプローチだけでなく、組織(学校)と地域社会との連携、雇用の創出という多角的な視点を提示している。「部活動の限界」が迫っているからこそ、高校サッカー界から現状打破と育成ロールモデルの構築の足がかりを作っていきたいと藤島監督はビジョンを明かす。
「将来的にはサッカーだけではなく、陸上をはじめ、その他のスポーツを含めた総合型クラブとしてやっていけたらいいなと思っています」
中学生が高校生の試合に出場するという事実から見えた新たな部活のあり方。10年前に始まったチャレンジが、実を結び始めている。