濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
王者・AZMが「天才」と断言し溺愛する駿河メイ、その真の凄さとは? ハイスピード王座戦で敗北もスターダムファンが熱狂した理由
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/05/08 11:01
4月29日のスターダム大田区大会にて、ハイスピード王座をかけて対戦したAZMと駿河メイ
ロープもコーナーもない市ヶ谷の極小会場で磨かれた“プロレス頭”
彼女は我闘雲舞という小さな団体に所属している。コロナ禍では「チョコレートプロレス」という名称で、市ヶ谷にある建物の1室を使った配信マッチを行なってきた。
ただカメラの向こうに観客がいるから「無観客試合」とは言わない。そうした細かく丁寧なこだわりを積み重ねてきた団体で、なおかつ本人いうところの「野放し育成」でメイは力をつけた。
師匠であるさくらえみはアイスリボン創設者でもあり、キッズレスラー、芸能界からの挑戦など新たな流れを次々と作った女子プロレス界最重要人物の1人だ。
チョコレートプロレスの会場にはロープもコーナーもない。いわゆるマットプロレスだ。選手は窓枠から飛び技を出したりする。空間をいかに使うかが大事で、頭を使わなければいい試合はできない。しかもメイは、この舞台で藤田ミノル、高梨将弘といった男子の“手練”たちとも対戦している。むしろ試合の相手は男子が多いほどで、余計に“プロレス頭”が磨かれた。
「市ヶ谷はロープの反動が使えないし高さにも限界があります。狭いですし。そういう中で思い切り体を動かすやり方が身につきました。市ヶ谷で試合ができたらどこでもできると思います」
AZMも同じことを考えていた。
「市ヶ谷の試合、あれ凄いですよね。部屋の中で試合して。リングじゃないところでいろんな動きをしてるから、リングでやったらもっと凄くなるんだと思います。頭の回転が違うんだろうなって」
相思相愛の2人が語った“お互いの凄さ”
両国でも大田区でも、メイは会場の大きさに戸惑うことはなかった。むしろ「開放感がありますね」と喜んでいた。市ヶ谷で培った力を全開にすれば、どんな会場でもファンを魅了できた。“プロレス頭”は、ハイスピード戦にも通じるものがあるという。
「ハイスピードをやる選手は、基本的に頭がいいと思います。近道をして速いのは当たり前で、遠回り(の動き)をしても速いのがハイスピード。基本の動きを的確にやって、大事なところを端折らない。その上で自分の判断で頭を使って動くから新しいものが生まれる。そう教わりましたし、AZMさんはそういう意味で生粋のハイスピードの選手だと思います。だから気になるし好きなんです」
実は試合前、AZMも似たようなことを言っていた。
「メイちゃんはとにかく速いんですよ。普通の試合だったら私が先に動いて相手を待つことが多いんですけど、メイちゃんとの試合はそうならないでしょうね。その速さも、シンプルに足が速いというか動きが速いというか。技のかけ方が速いとかではないんですよね」