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王者・AZMが「天才」と断言し溺愛する駿河メイ、その真の凄さとは? ハイスピード王座戦で敗北もスターダムファンが熱狂した理由
posted2022/05/08 11:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
「ようこそスターダムへ」と言うべきか、それとも「ようこそ駿河メイの世界へ」か。AZMと駿河メイの初シングル戦は、高すぎるほどの期待を軽々と超えるものになった。
4月29日のスターダム大田区総合体育館大会。両者はハイスピード王座をかけて対戦した。3月の両国大会、さまざまな団体から選手が登場した時間差入場バトルロイヤルでメイ(我闘雲舞/チョコレートプロレス)が優勝し、挑戦表明している。
タイトルマッチ、しかも団体が違う。けれど対抗戦のような雰囲気はなかった。喧嘩腰の舌戦、挑発もない。なにしろ2人は“相思相愛”だった。
AZMはメイを「天才」と断言
初対戦はAZM、メイ、小林香萌の3WAYマッチ。2020年2月の花月引退興行で組まれた。スターダムは他団体との試合が少ないから、AZMにとって大きな刺激だった。とにかく楽しかったという。メイもAZMがずっと気になっていた。
「3WAYで対戦して、闘ってワクワクする選手だなと思いました。それから2年間、AZMさんを記事や動画、SNSで追ってたんです。そうするとどんどん気になる選手になっていって。でも試合をするのは2年ぶりなので。あの時が17歳で今19歳ですよね。もう別人になってると思います。それくらい成長してるなって」
9歳でプロテスト合格、スターダム3期生(KAIRIと同期になる)のAZM。今年20歳の若さだがキャリアは豊富で、技の的確さや試合運びは一級品だ。今年2月、スターライト・キッドからハイスピード王座を奪った試合は海外でも絶賛された。
ニックネームは“AZMセンパイ”。キャリアと若さのギャップだけでなく、試合ぶりが尊敬に値するということでもあるのだろう。筆者はある男子レスラーから「最近スターダム見てるんですよ。AZMいいですよね」と言われたことがある。レスラー同士だから伝わる凄さもあるようだ。
躍進を続けるスターダムに欠かせない存在。そのAZMが試合前、メイを「天才」と断言した。
「天才ですよ、間違いなく。だから(ベルトを奪われる)危機感も凄くあります。闘うのは2回目だけど、自分がやることを見抜かれてるんじゃないかって気もしますし。でも楽しみ。2年前の試合も、シンプルに“プロレスめっちゃ楽しい!”と思ったんです。心から楽しんでた感じ。あれをもう一回味わいたいです」
スターダムファンを熱狂させた“メイの世界”
試合は、AZMだけでなくメイだけでもなく、会場全体が“楽しさ”で包まれるようなものになった。楽しすぎて驚く、この楽しさは何だろうと思って興奮する。そんな試合だ。それが駿河メイの世界だった。
試合前、スターダムのファンに自分のどこを見てほしいかと聞くと、彼女は言った。
「こんなにプロレス楽しんでる人がいるんだなと思ってもらえたら。もちろん試合なのでムキになったり感情的になることもあるんですけど、基本“楽”の一文字で生きてる人間なので(笑)。こういう選手もいるんだなと思ってもらって、笑顔が伝染するといいなって」