濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
王者・AZMが「天才」と断言し溺愛する駿河メイ、その真の凄さとは? ハイスピード王座戦で敗北もスターダムファンが熱狂した理由
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/05/08 11:01
4月29日のスターダム大田区大会にて、ハイスピード王座をかけて対戦したAZMと駿河メイ
スターライト・キッドとは違うタイプのライバルに?
動きをショートカットするのではない、技術とフィジカルに裏打ちされた本物の“ハイスピード”。メイはそれをシードリングのレフェリーを務める元選手、南月たいようから教わったそうだ。南月のかつてのリングネームは夏樹☆たいよう。初代ハイスピード王者であり、AZMがデビュー戦で闘った覆面レスラーの“中身”でもある。
小さい体でどう闘うか。AZMにとって夏樹はお手本だった。夏樹がスターダムを離れた後、その“イズム”を学んだのがメイだった。AZMとメイはハイスピードの源流を受け継ぐ同志、あるいは精神的な姉妹のようなもの。相思相愛は当然のことだったし、めぐり逢うべくしてめぐり逢ったのだ。
いわば必然の名勝負。キッド戦では「ハイスピードの試合の中でも“強い”試合ができた」というAZMは、今回のメイ戦で究極のハイスピード戦を作り上げたと言っていい。駿河メイの世界に自ら飛び込み、楽しむことでそれを可能にしたのだ。曰く「メイちゃんのスタイルでやりたかった。それが楽しかったですね。疲れましたけど(笑)」。
AZMは試合を終えると、よく「疲れたー!」と言っている。それはどんな場面でも“端折る”ことなしに動き続けるからだろう。スターライト・キッドとはまた違うタイプのライバルを得て、AZMのキャリアにも新たな展開がありそうだ。
「AZMと駿河メイの物語」に続きは…?
タイトルマッチ調印式で、メイは「私が勝ったらAZMさんを市ヶ谷にご招待したい」と語っていた。
「一つの団体で頑張るのも凄いことだけど、いろんな世界を見てみるのもいいと思うんですよ。私もいろんな団体に出させてもらって、アメリカにも1カ月半行かせてもらって、その上で市ヶ谷が好きだなって思ったので。そういう感覚をAZMさんにも味わってほしいなっていう“余計なお世話www”で」
AZMが勝ったことで市ヶ谷登場は(条件的には)なくなったようだ。ただ調印式でのAZMは条件などなしでも市ヶ谷で試合をしたそうだった。ちなみにAZMが出した条件は「私が勝ったらメイちゃんとタッグを組みたい」。試合後のメイは負けてすぐタッグを組むほど「いい子」じゃないと言っていたが、AZMはあきらめていない。「ハイスピード以外もお楽しみに」とまで言う。
AZMと駿河メイの物語には続きがあるはずだ。というより、なくてはいけない。まして現在のスターダムは、若手主体興行『NEW BLOOD』などで他団体・ユニットとの交流が活発になっている。AZM自身、以前から「他団体の選手と試合がしたい」と言っていたから、今の流れは大歓迎だ。
「他団体と交わるのは刺激だらけですね。スターダムの生え抜き選手は“箱入り娘”って感じだからなおさら。『NEW BLOOD』はいい機会になるでしょうね」
新たな流れが生まれてきたスターダム。AZMはその先頭を走る。もしかすると、AZMとメイのような物語は他にもあるかもしれない。2人はハイスピード戦だからこそ、カテゴリの枠を超える名勝負を生んだ。それはスターダムにおける“新しさ”の象徴でもあった。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。