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「体罰を容認=83%」12年前に桑田真澄が取ったアンケートの衝撃結果… 秀岳館サッカー部に痛感する“部活と暴力の認識改善”
posted2022/05/02 17:01
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Sports Graphic Number
秀岳館高校サッカー部で起こった暴力事件について、事件の真相が明るみに出るとともに様々な声が上がっている。これまで取材した内容をもとに「スポーツと暴力」について記しておきたい。
数年前、多くの高校部活の取材をしており、野球だけでなくバレーボールやバスケットボール、ハンドボール、陸上などでインターハイに何度も出場した学校の指導者に話を聞いた。
「今は時代が違うからそういう指導はしない」
そうした指導者の何人かは問わず語りに「手は出してないよ」と言った。暴力は振るっていないということだ。ただ、これに続くのは決まって「今は周りがうるさいからね」との言葉だった。
「僕らの時代は、監督に殴られ、蹴られるのは当たり前だった。でも、今は時代が違うからそういう指導はしない」
このような言葉もたびたび聞いた。
確かに、高校部活の暴力は減少しているのだろう。また指導者の口ぶりからも「あの指導者は暴力をふるっている」と評判を立てられないように、気を遣っていることがうかがえる。
これらの指導者が暴力を振るわない理由の根本は「世間がうるさいから」、「時代が変わったから」なのだろうか。もし、世間において今まで通りの指導がまかり通っていたなら――今も暴力をふるっていたということなのか?
日本学生野球協会は、定期的に審査室会議を行い、問題ある高校、大学の処分を発表している。その中に必ずあるのが「体罰」「暴言」と「部員同士の暴力」である。こうした学校の指導者は2~数カ月程度の謹慎処分となることが多い。
「体罰」とは、実質的には指導者が部員にふるう暴力のこと。中には負傷して医者に運ばれるようなものもあるようだが、こうした場合でも本人や学校が被害届を出さない限りは暴行にも傷害にも問われない。
街の中で殴りかかられて負傷すれば警察沙汰になる。場合によっては刑事事件となり加害者は罰せられるが、学校内では「謹慎処分」で済んでしまうこともある。
「暴力につながりかねない“熱血指導”」はOKなのか
高校野球で著名な指導者の中には、過去に学生野球協会から謹慎処分を受けた人もいる。ただ謹慎処分になった指導者に対して、選手の父母から処分の軽減を求める嘆願書が上がることもある。「あの先生は誰よりも子供のことを考えてくれる。だから手が出てしまう」と言う人もいるという。