欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
久保建英は「バルサ下部組織の旧友」と何を話したのだろうか… カンプノウで撮った才能の一端と敗戦の悔しさ〈撮影者の視点〉
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/05/07 06:00
バルサの本拠地カンプノウに乗り込んだ久保建英
ハーフタイムの間に久保の途中出場に備え、撮影ポジションを変更した。バルサの猛攻を耐え、前半を1失点で乗り切ったマジョルカは、後半開始から久保がアップに入った。
両監督がテクニカルエリア最前線で見つめる後半は、54分、開始から早いタイミングでバルサが追加点を挙げた。
試合の行方を大きく決定づけるゴールを奪ったのは、ベテランとなりキャプテンマークを巻くブスケッツ。混戦の中から冷静に左足でミドルシュートを流し込んだ。
アギーレが「Take、お前に決めた」と指さし
ADVERTISEMENT
このバルサのゴールでマジョルカベンチの動きは加速する。
「Take、お前に決めた」というように、アギーレが久保を指差す。
すでに身体を十分に温めて出番を待つ20歳がベンチに走る。ゴールから6分後、久保とボランチのグレニエルの2枚同時交代で攻撃に出る。マジョルカにとっては、相手がバルサだろうが、敵地だろうが負けることは許されないからだ。
トップ下に入った久保には、攻撃時はゴールに直結する働き、そして、それ以外の場面では、バルサの心臓ブスケッツに纏わりつくこと、その2つがアギーレから与えられた指示だろう。
自陣深く、またはピッチ中央で身体をぶつけブスケッツからボールを奪うとする久保。 対するは世界的トップレベルのボランチ、身体に触れさせることすら許さない。互いの意地がぶつかり合う。
しかし、攻撃局面で久保はタクトを振るうことができない。バルサの圧力に対し、久保の元までボールを運ぶことがマジョルカにはできなかった。
マジョルカはゴール前に押し込められた混戦の中、3点目となるゴールを押し込まれ、久保にも悔しい表情がうかんだ。その後、ゴールは取り消されたが、マジョルカにとって苦しい状況は変わらない。アギーレは、70分、イ・ガンインとサルバ・セビージャを投入した。
試合展開を変えかけた久保と、バルサ指揮官の判断
攻撃センスを共有できるイ・ガンインを隣に持てたことで、お互いがサイドと中盤のポジションをチェンジしながら、バルサ守備陣に楔を打ち込んでいく。わずかな綻びを見つけ、久保は出場から10分強、この試合初のシュートまで持っていくことができた。
しかしバルサ黄金期の中盤に君臨し続けていた現バルサ監督は、試合展開の機微を見逃さなかった。すかさずデンベレと、怪我から復帰のアンス・ファティを投入し、さらなる攻撃の圧でマジョルカを封じにかかった。