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《追悼》「新しいW杯を創設すべきときかもしれない」イビチャ・オシムが“最後のインタビュー”で語っていたこと

posted2022/05/04 17:03

 
《追悼》「新しいW杯を創設すべきときかもしれない」イビチャ・オシムが“最後のインタビュー”で語っていたこと<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

旧ユーゴスラビア代表監督などを経て、日本ではジェフユナイテッド市原・千葉、日本代表で監督を歴任した。享年80

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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Sports Graphic Number

日本代表監督を辞した後も、日本サッカーを長年にわたり見守り、数々の提言をしてくれたイビチャ・オシムさんが2022年5月1日、逝去されました。故人を偲び、「Sports Graphic Number」と「Number Web」でそれぞれ最後にインタビューした記事を公開します。(雑誌編/Web編へ)
<初出:Sports Graphic Number PLUS October 2021 EURO 欧州蹴球名鑑 2021-2022(2021年9月14日発売)、肩書きなどすべて当時>
 

世界のフットボールを長年牽引してきた2人のビッグスターが共に新たな場所を求めた。この現象は何を意味しているのだろうか。富めるクラブは、最高の選手や若き才能を自チームに集結させ、より抜きん出た存在になろうとする。80歳の今も各国のサッカーを鋭い視線で見つめる御大が欧州サッカーの潮流を縦横無尽に論じる。

◆◆◆◆◆

 ヨーロッパで新しいシーズンがはじまった。

 新シーズンを迎え、サッカーは一歩前進した。早晩、EUROやコパ・アメリカ、アジアカップ、さらにはW杯までが、ひとつの国のリーグで具現できるようになるだろう。

 それぞれのクラブに所属する選手は豪華で、ことにレアル・マドリーのようなクラブは、世界最高の選手たちをすべて買い集められる。

 レアルに限らず複数のクラブが同じことができるが、レアルは世界一の金持ちクラブでもあるから、レアルを有するラ・リーガがそのまま世界最高のリーグということになる。もちろんビッグクラブはイングランドやドイツ、フランスやイタリアにもあって、それらも興味深いがまた別の話だ。今に始まった話ではないが、金を持つクラブが好きな選手を買い、抜きん出た存在になる。クラブ間、各国リーグ間の距離は縮まり、すべてが同じ方向に進んでいるのは間違いない。

メッシを獲得できるクラブは、また別のメッシも獲得できる

1.リオネル・メッシはひとつの事例となった。

 今はサッカーに興味を示さない大金持ちたちも簡単に参入ができ、クラブを買収して台頭する若い選手たちを買うことができる。将来を保証するのはそうした選手たちで、彼らの多くは頻繁にクラブを替える。そしてビッグクラブに所属するトップ選手も、プレーが悪ければ即座に誰かにとって代わられる。別の選手を買う選択肢が生まれ、それが市場の現実でもある。

 他の選手にも同じことができると思わせた点で、リオネル・メッシはひとつの事例となった。メッシを獲得できるクラブは、彼のために走る選手も獲得できる。また別のメッシも獲得できる。チームは必然的に国際的になる。

 逆にメッシを放出したバルセロナは、彼に代わる存在の獲得が急務だが、それはクラブの内外に戦争を勃発させるだろう。メッシとはタイプが異なるが、彼同様に優れた才能と資質を持ち、すでにそれを発揮している選手だ。獲得には莫大な金がかかる。すぐにというわけにはいかない。少し時間が必要だ。

【次ページ】 知性が何よりも重要で、知性なしには働けない

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