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「毎日罵られる“審判さんの仕事”はつらすぎます」 元パ首位打者・鉄平が“判定への反論”を封印した日〈佐々木朗希の件も解説〉
text by
間淳Jun Aida
photograph byKyodo News
posted2022/05/04 11:03
楽天の主力を張っていた頃の鉄平。バッターボックスから至近距離にいる審判の苦悩を感じ取っていたという
「気持ちはわかるけど、ああいう態度を取られると…」
二軍でプレーしていた若手の頃、内野安打だと思って一塁を駆け抜けた時に、アウトとコールされた。納得できずカッとなり、一塁の塁審に少し詰め寄ったという。なだめられて処分を受けることはなかったが、試合後に塁審から声をかけられた。
「気持ちは分かるけど、ああいう態度を取られると大変なんだよと言われました。報告書を提出しないといけなくなるそうです。審判さんも事情があるんだと勉強になりましたし、申し訳ない気持ちになりました」
鉄平氏は二度と判定に反論しなかった。そして、ストライクゾーンの違いも「野球のおもしろさの1つ」と捉えて打席に立った。人間味が失われたら、野球の魅力は半減する。だからこそ、佐々木朗希と白井球審の騒動を受け、「AI審判」導入の議論が再燃していることには異議を唱える。
「個人的には大反対、“大”が付く反対です。人間がやるからおもしろいのであって、判定を考えながら実行するのがプロの選手だと思います。1球のストライク、ボールの判定で投手が立ち直ったり、試合の展開が大きく変わったりするところも野球の魅力です。ストライクかボールかをビデオ判定していたら試合のテンポも悪くなります。AIになれば正確性、一貫性は上がるかもしれませんが、個人的には判定も野球のおもしろみと捉えたいです」
1つの判定は時に、試合の勝敗を左右する重みを持つ。判定によって選手の評価や未来が変わる可能性もある。自分にとって不利に働くリスクがあったとしても、鉄平氏は野球に人間味を求めている。<つづく>
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