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「毎日罵られる“審判さんの仕事”はつらすぎます」 元パ首位打者・鉄平が“判定への反論”を封印した日〈佐々木朗希の件も解説〉
posted2022/05/04 11:03
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Kyodo News
騒動の余波は1週間経っても続いている。
4月30日。オリックスと西武の一戦で両チームのスタメンと合わせて、審判員が発表される。「球審、白井」のアナウンスが京セラドームに響くと、観客はざわめき、拍手も起こった。白井一行審判員が球審を務めるのは、あの騒動以来、初めてだった。
「どちらもプロですし、人間だもの」
4月24日、白井審判員はオリックス―ロッテ戦で球審を担当した。
議論を巻き起こした場面は2回裏。ロッテの先発・佐々木朗希がオリックスの安達了一に投じた3球目がボールと判定された時だった。佐々木は判定に納得いかないような態度を示し、白井球審は厳しい表情でマウンドの佐々木に詰め寄った。
後日、日本プロ野球選手会は「コミュニケーション不足が一因」との考えを示し、審判員の技量や試合中の対応などに関する質問状を提出すると明かしている。
プロ野球OBや野球ファンの間では白井球審の行動に対する評価が二分し、議論が過熱している。一方、騒動を冷静に見ている野球関係者もいる。2009年に楽天で首位打者のタイトルを獲得し、昨シーズンまで楽天でコーチを務めていた鉄平氏も、その1人だ。
一軍の試合に1000試合以上出場した経験から「特別、問題にすることはないと思います」と話す。そして、こう続けた。
「選手も審判さんもプライドを持ってプロとしてグラウンドに立っているからこそ、ぶつかり合いが起きます。決して珍しいシーンではなく、佐々木投手の注目度が高いので取り上げられたと感じています。
もちろん、佐々木投手が試合中に繰り返し判定に不服そうな顔をしたり、問題の場面でマウンドを少し降りたりしたのは良くないですし、白井球審は佐々木投手に注意するタイミングがふさわしくなかったと思います。ただ、どちらもプロですし、人間だものという話です」
「毎日、毎日、割に合わないと切なそうに」
鉄平氏は現役時代、審判と一定の距離を保っていた。挨拶は欠かさなかったが、話し込むことはなかった。八百長といった、あらぬ疑いをかけられないよう誤解を招く行動を避けていたためだ。それでも、審判の嘆きを耳にしたことがあった。
「毎日、毎日、割に合わないと切なそうに言葉を口にしていました」
鉄平氏が記憶をたどる。楽天でレギュラーに定着した2007年頃、味方の攻撃を終えて外野の守備に就こうと、球審の近くを通った時だった。
「どんな流れで会話が始まったかは覚えていませんが、試合の判定について言葉を交わしました」
割に合わない。球審から思わず漏れた一言を今でも覚えている。