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甲子園の風BACK NUMBER
《甲子園勝率.853の名将》中村順司75歳が語る“常勝・PL学園と今年の大阪桐蔭の共通点”とは「負けた桑田、号泣の清原を見て…」
text by
間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama/Jun Aida
posted2022/04/24 11:02
大阪桐蔭・西谷浩一監督と中村順司氏。高校野球が誇る名将だ
「今年のPLを象徴するシーン。連打は出ないので、チャンスを確実にものにするのが今年のチームです」。
そして、スクイズを決めた4番・深瀬さんは「1点1点きっちり取っていこうと思っていたので、スクイズのサインが出たら絶対に決めるという気持ちでした」と答えている。中村さんが「似ている」と感じた大阪桐蔭も、リードした展開で主軸に打順が回っても、得点の可能性を高めるためにバントを選択して1点にこだわっていた。
西谷監督に感じる“2つの共通点”とは
中村さんはチーム作りにおいても西谷監督に共通点を感じている。
「守備の強化」と「将来を見据えた育成」。
派手な打撃が目を引く大阪桐蔭だが、西谷監督が最も重要視するのは守備。相手に圧力をかけるほど隙のない守備が、チームの強さを支えているのだ。中村さんもPL学園の監督時代、守備に重点を置いてきた。
「基本は守備です。たとえ高校の時はベンチに入れなくても、守りがしっかりしている選手は大学や社会人でメンバーに入る可能性が広がります。上のレベルにいくほど、打撃は弱点を見つけられれば徹底的に攻められます。守りができれば途中出場でチャンスをつかんだり、7、8番の打順で試合に出たりできます。ヤクルトで活躍した宮本慎也のように、結果的に2000本安打を達成できるかもしれませんから」
中村さんは「甲子園に行きたい」、「全国制覇をしたい」と口にしたことがないという。選手を指導する目的は、ただ1つ。「プロと言わなくても、大学や社会人で野球を続けられる基礎をつくって選手を送り出したいと思っていました」。選手には30歳まで野球ができたら成功者と言い続け、その後の30、40年は社会に貢献したり、少年野球に恩返しをしたりしてほしいと伝えていた。
西谷監督のすごさは「みんなの将来を考えている」
中村さん同様、西谷監督の教え子もプロをはじめ、大学や社会人でも野球を続ける選手が多い。大阪桐蔭で甲子園に出場した経験のある選手は、こんなエピソードを披露している。
「西谷監督のすごさはベンチに入っていないメンバーを含めて、みんなの将来を考えてくれるところにもあります。選手が進路を選ぶ時に、個々のプレースタイルや性格、進学先の大学のチーム状況などを見て、2年後3年後に出場機会があるのか、成長できる環境なのかを考えてくれます」