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《桜花賞》ナミュール最大の課題“出遅れ”は克服した? 調教師が正直に語った“期待と心配”「まだスタートに全幅の信頼は置けないが…」
posted2022/04/08 17:05
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Photostud
「小柄だけど凄く機敏そう」
高野友和調教師はナミュールに対する第一印象をそう述懐する。同馬がまだ1歳の夏の時の話だそうだ。それから約1年後に栗東トレセンの厩舎に入るのだが、その少し前に牧場まで様子を見に行ったという。
「小ぶりなのは相変わらずでした。でも歩き方や佇まいにいかにも『走りそう』という雰囲気が漂っていました」
だからその直後に「期待を持って」入厩させた。
入厩後の様子については次のように語る。
「デビュー前の調教も良かったです。ゲート試験も問題なかったし、何と言ってもフットワークが違いました。牧場から連絡があり『どうですか?』と言われ、『“超絶”です』と答えたのを覚えています」
馬房の中では他を近寄らせない厳しい雰囲気があった。しかし……。
「外に出して調教で乗る時は従順でした。この感じは今でも変わりません」
デビュー戦で覗かせた能力と課題
21年9月11日、中京競馬場芝1600メートル、牝馬限定の新馬戦でデビュー。初戦からメンコ(耳覆い)を装着していたが、これに関しては高野調教師の一つの考えがあった。
「人それぞれ考えがあると思いますが、私は個人的に耳を覆う事で能力が阻害されるとは考えていません。敏感な牝馬だし、少しでも落ち着くのであれば装着して良いと思っています」
レースでは先行するのだが、よく見るとスタートは今一つだった。後に発馬が課題になるのだが、デビュー戦で既にその兆候は覗かせていたのだ。
「新馬戦だから皆、ダッシュが遅くて、結果的に前へ行けました。でも、確かにスタートは決まってはいませんでした。川田(将雅)騎手のアシストがあって好位をとれた形でした」
ただし、それに対して指揮官が頭を悩ませたわけではない事が、続く言葉でわかる。
「新馬戦はうまくいかなくて当然だと考えていますから。そんな中では上手に競馬が出来たと思いました。最後は余裕があったし、能力は出せる競馬を出来たと感じました」
「阪神JFの“出遅れ”は間違いなく私の責任」
こうしてデビュー勝ちをしたナミュールを、続く1戦では東京へ連れて行った。11月21日の赤松賞(東京競馬場芝1600メートル)に出走すると、スタートこそよくないものの、最後の直線では豪快な伸びを披露。先に完全に抜け出したと思えたパーソナルハイをあっという間にかわすと、最後は楽々と流す余裕を見せて真っ先にゴールラインを駆け抜けた。「強かったですね」と言う高野調教師は更に続けた。
「ゲートが悪くてヒヤッとしたけど(騎乗した)三浦皇成君が上手にリカバリーしてくれました。彼は初騎乗だったけど、返し馬の時点で『モノが違う』と思ったそうで、その感触を信じたからスタートで後手を踏んでも焦らなかったそうです」