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《桜花賞》ナミュール最大の課題“出遅れ”は克服した? 調教師が正直に語った“期待と心配”「まだスタートに全幅の信頼は置けないが…」 

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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posted2022/04/08 17:05

《桜花賞》ナミュール最大の課題“出遅れ”は克服した? 調教師が正直に語った“期待と心配”「まだスタートに全幅の信頼は置けないが…」<Number Web> photograph by Photostud

3月5日のチューリップ賞(GII)を圧巻の競馬で制したナミュール。桜花賞ではサークルオブライフとの“2強”の構図が予想される

 こうしてデビュー2連勝を飾ったナミュールだが、続く阪神ジュベナイルフィリーズ(GI、阪神競馬場芝1600メートル)では大きく出遅れて4着に敗れてしまう。不安のゲートの悪さが露呈してしまった形に、高野調教師は「全て調教師の責任」と持論を展開した。

「前走でゲート内の駐立が悪かったのは分かっていて、直さなくてはいけない事案でした。ただ、当初阪神ジュベナイルフィリーズは使わないつもりだったので、赤松賞のレース後は放牧に出していました。結局、急きょ使う事になったので、帰厩後はゲート練習を集中的にやりました。その結果、中で激しく暴れるのは解消出来たと思っていました」

 ただ、1点、見落としてしまった事があったと言う。

「暴れなくなったと思ったのですが、後ろの扉にモタれるようにくっついて止まっていただけでした」

 だから阪神ジュベナイルフィリーズの敗因は「それを見逃した自分の責任」だと考えた。

「基本的に出遅れは調教師の責任だと考えているのですが、ナミュールの阪神ジュベナイルフィリーズに関しては間違いなく私の責任。何とかしてあげられたと申し訳なく思いました」

ゲート克服へ…“合宿のような”トレーニングの日々

 今年の初戦はチューリップ賞(GII)。本番の桜花賞(GI)と同じ阪神競馬場の芝1600メートル戦に、最後の出走権利を懸けて出走。中間のゲート練習に関して問うと、次のように答えた。

「駐立時に暴れなくなったけど、今度は後ろにモタれないように教え込みました」

 それはまるで「合宿のよう」と語る指揮官に、具体的にどのようにして教えたのかを聞くと、次のような答えが返ってきた。

「後ろ扉を開けると後ずさりをするようにすぐに出ようとするので、そこで軽くストレスを与えて出られないようにしました。そうすると、ゲートの中へ戻るので、そこで褒めてあげる。それを何度も繰り返すうちに『下がると何かあるな……』『下がらないと褒めてもらえるな……』と分かってくれるようになっていきました」

 結果、後ろ扉にモタれる事なく、枠内で立つようになった。

 ペンで記すのは簡単だが、実際にはあまり強いストレスをかけては逆効果になりかねないので、適度なさじ加減が必要になってくる。これは経験則から身につけた“勘”も大きなポイントになるだろう。また、言葉が通じるわけではないので、教えた事をすぐ理解してくれるわけでもない。理解したと思ったら次の日には忘れている等という事もあるはず。高野調教師と厩舎スタッフは毎日、ナミュールと戦った事だろう。

チューリップ賞は、デビュー以来最もいいスタートだった

 その成果がチューリップ賞の競馬ぶりに見て取れた。新たなるパートナーである横山武史騎手を背にしたナミュールは、ゲートが開くとデビュー以来、最も良いスタートを切ってみせたのだ。

「そうですね、スタート自体は出てくれました」

 最初の課題は克服した。しかし、競馬そのものは楽なモノではなかった。直線では馬群に包まれる厳しい位置に入ってしまった。

【次ページ】 最終追い切りでの横山武史の“一言”

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ナミュール
高野友和
横山武史

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