甲子園の風BACK NUMBER
大阪桐蔭は『廻廻奇譚』『うっせえわ』、近江は“西川貴教×地元スーパー”…ブラバン研究家が驚いたセンバツ応援5選《花巻東=山口百恵はなぜ?》
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2022/04/04 11:00
もはや甲子園名物!? 大阪桐蔭高校吹奏楽部の楽器トラック。イラストは、卒業した吹奏楽部員が手がけた
今回は、3年ぶりに甲子園で自校の応援ができるとあって、アニメ『呪術廻戦』オープニング曲『廻廻奇譚』(Eve)、2021年新語・流行語大賞トップ10入りした『うっせぇわ』(Ado)、アニメ『「鬼滅の刃」遊郭編』オープニング曲『残響散歌』(Aimer)、今大会の入場行進曲でもある『群青』(YOASOBI)など、例年よりも多い10曲を用意。今大会は、感染対策で奏者は50人以内と決められていたが、トランペットやトロンボーンなど、音がよく鳴る金管楽器中心のメンバー構成で演奏。アルプス席から流れる豊かな桐蔭サウンドは、優勝への後押しとなったに違いない。
5)大島:豊かな郷土色度★★★★★
島にゆかりのある曲を多数取り入れ、郷土色を全面に打ち出した選曲に心を打たれた。『稲すり節』や『イトゥ』などの島唄のほか、新民謡の『島育ち』『十九の春』『島のブルース』をメドレー形式で演奏。徳之島出身の直江朝日選手用には、「島の人もテレビ中継を観て応援しているだろうなと思い、『手舞いの空』『ユイの島』など、徳之島にゆかりのある曲を用意しました」と、吹奏楽部顧問。甲子園は、多くの人にとって故郷を感じられる数少ない場所だけに、「地元の人たちが喜んでくれる選曲を」という学校の姿勢が素晴らしいと感じた。
各校の工夫を凝らした応援は、テレビなどの中継を通して、全国の高校野球ファンの心に響いたのではないだろうか。
紹介した5校以外にも、素晴らしい応援はまだまだあった。
数あるチャンステーマの中でも、古い歴史を誇る天理(奈良)の『ワッショイ!』、得点時に何度も鳴り響いた星稜(石川)の『星稜コンバット』、『レッツゴーICHIKO』などのオリジナル曲にこだわる市和歌山(和歌山)、「応援に向いてそう」と、令和の時代に山口百恵の『プレイバックPart2』を取り入れた花巻東(岩手)、初回の攻撃時に、オーストリアの作曲家、フランツ・フォン・スッペの代表作『軽騎兵』序曲のファンファーレを高らかに轟かせた長崎日大(長崎)、グループ校であるクラーク国際(北海道)の応援に駆けつけ、きらびやかな『キン肉マン』や『ドリフの早口ことば』を演奏したIPU・環太平洋大学マーチングバンド部など、センバツの終わったいま思い返しても、感動と興奮で胸が高鳴る。
今年の夏こそは、吹奏楽部の人数制限などもなくなり、完全な形でのアルプス応援が復活することを心から願っている。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。