甲子園の風BACK NUMBER
センバツ“繰り上げ出場”に近江ブラバン部員は「え? え? どういうこと!?」「一瞬理解できず」…準備期間“わずか3日”で対応できたワケ
posted2022/03/21 17:03
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph by
Yukiko Umetsu
雨天順延で1日遅れの開幕となった、第94回選抜高校野球大会。2日目に出場予定だった京都国際が、野球部関係者に新型コロナウイルスの集団感染が発覚したことから、急きょ出場を辞退することに。選手たちの心情を思うと何ともいたたまれない気持ちだが、替わりに出場することになったのが、近畿地区補欠1位校の近江(滋賀)だ。
3月17日(木)に繰り上げ出場が決定し、初戦は2日後。しかし、吹奏楽部も応援に行くことを決めた。その後、雨天順延の影響で20日(日)にずれ込んだが、準備期間は3日しかなかった。今大会は、「奏者は50人以内」「奏者同士の距離を十分に取る」などの条件付きで、吹奏楽部の演奏が許されている。
“繰り上げ出場”決定の前日に…
吹奏楽部出身の筆者は、毎年春夏、吹奏楽目線でアルプススタンドのブラバン応援を取材しているが、3月16日(水)に近江高校吹奏楽部の卒業演奏会があると聞き、早めに関西入りして演奏会を聴きに行った。近江の演奏は甲子園での野球応援曲しか聴いたことがなく、一度コンサートホールで聴いてみたいと思っていたのだ。ひこね市文化プラザグランドホールで行われた演奏会は、3年生の引退公演でもあり、例年は2月に開催している。ところがコロナ禍で延期となり、この日に振替となったのだ。
演奏曲のラインナップは、『ドラゴンクエスト』『タイプライター』『歌劇「アイーダ」より凱旋行進曲』『ルパン三世のテーマ』など、耳になじみのある曲ばかり。「地域のみなさんに応援してもらえるクラブ活動」を目指している部だけに、お客さんは地元の人々が中心。吹奏楽やクラシック音楽に興味があるお客さんばかりではないので、この構成は素晴らしいと思った。聴いたことのない難しい曲ばかり演奏されても、眠くなるし、何よりおもしろくないからだ。
地元滋賀県民なら誰もが知っている、スーパー「平和堂」のテーマソングも演奏。どこで入手したのか、生徒は店員が着用している赤いエプロンを身につけて踊り、客席は笑いに包まれた。さすが地域密着バンド!